MasaichiYaguchi

クリード チャンプを継ぐ男のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.0
本作はタイトルで分かるように主役はロッキーではなく、シリーズファンなら誰でも知っている彼のライバルで親友、元ヘビー級チャンピオン、アポロ・クリードの息子を描いている。
だからスピンオフ映画だと思って観てみたら、本シリーズを正統にに引き継ぐ新章と呼べる作品だった。
名作「ロッキー」から約40年、本作には若さとギラギラした闘志溢れるロッキーはいない。
演じるシルベスター・スターローンもアクション映画でのイメージとは違い、ボクシング界を離れ、過去の対戦や栄光を懐かしみながら、ガンで亡くなった愛妻の名を付けたレストラン「エイドリアン」を切り盛りする枯れた老人に成り切っている。
そんな彼の所に弟子入りを志願する若者が訪れたことで物語は動き出す。
この父ではなく母方の名字を名乗るアドニス・ジョンソンは、自分が生まれる前に亡くなった父の面影を追うように、身体の中を流れる血脈を辿るように、安定した仕事や生活を擲って、父が人生を賭したボクシングに飛び込んでいく。
そんな彼の思いや決意をロッキーは汲み、2人して頂点を目指す挑戦が始まる。
この師弟は夫々過去に愛する人々を失い、孤独な魂を抱えている。
そんな2人が歩む道程は平坦ではなく、アドニスの前には最強の対戦相手が、そして彼にボクシングで培ってきたもの全てを伝授しようとするロッキーにも克服出来ない“敵”が襲い掛かる。
アドニスが「ジョンソン」から「クリード」になる闘いは予定調和にはならず、過去の「ロッキー」シリーズへのオマージュの数々を込めて熱く展開していく。
これらオマージュの中で、ラストシーンで込められたものには思わず目頭が熱くなってしまった。