半兵衛

山の音の半兵衛のレビュー・感想・評価

山の音(1954年製作の映画)
3.5
横暴な夫にひたすら耐える原節子の被虐的な姿を通して彼女に本来備わっていないはずのエロスを醸し出して川端康成ワールドと自分の世界との調和をはかる成瀬演出の見事さ。でも夫を演じる上原謙があまりにも怖すぎて夫婦というより一方的な主従関係になりすぎてリアリティを欠いてる気がするし、原と禁断の恋に陥る一歩手前な義理の父山村聡があまりにも好人物過ぎて良識のあるメロドラマとしての立ち位置を壊さないところに成瀬監督の限界を感じたりもする。

上原謙のむっつりスケベぶりは険しい顔つきのせいで好色というより調教師のそれに近い、彼と関係をもった杉葉子のリアクションといいどんな異常プレイを体験したんだよ。

それと映画のタイトルに原作通り「山の音」と命名しているのに、原作では重用なアイテムとして使われている山の音を全く使わないのはどうかと思う。
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