NHK-BSのオンエアを録画視聴。初見。
名作。この機会に観られて良かった。
構図が本当にどこを切り出しても素晴らしい。冒頭の、奥行きをしっかり捉えた路地で山村聰と自転車の原節子が行き逢う場面など、惚れ惚れしてしまった。ラストの公園(新宿御苑らしい)のショットも、どれも見事。
物語としては、川端康成の原作でどんな舞台設定の話かはだいたい知っていたが、思った以上にピュアな描き方で、そこも良い意味で裏切られた。
現代の視点から見れば、当時は家父長制が普通だった時代でもあり、原節子の「耐える女性」としての鬱屈に(それを美化してはいないにせよ)苛立つ向きも多いかもしれないし、義父に向ける愛慕も共感し難いかもしれないが、エンディングにおいては女性の自立を描いたビターエンドとも言え、この時代に撮られた映画としてモノクロのスタンダードで観る分には、素直にドラマに浸ることができた。