【蝸牛のマスゲームって初めて見た】
ルネ・ラルーの短編アニメ。毒画家ローラン・トポールと組んでの二作目。
荒野にころころ転がる惑星? の一つで、農夫が育てる欲望が巨大化し、街に、なぜか蝸牛という巨大なカタストロフを呼び込んでゆくお話。
望みは程々にしておきましょう、という教訓じみたテーマも透けますが、発想がころころ転びどっち行くのやら、という過程をより楽しむ作品ですね。かつてラルーは、精神病院で患者と共に、セラピーとしての物語創作を行なっていたそうですが、その方法論は影響しているのでしょうね。
童話のような始まりから、『キング・コング』なエロスと破壊に突き進み、ちょっとシュルレアリスムへジャンプ。で、童話に戻って来る…ようですが、みる人によって、意味は違ってくるかもしれません。
この物語を占拠する蝸牛も、象徴としては多産など幾つも意味がありますが、それを解かずとも、フォルムや動き、得体の知れない感じが単純に面白い。
何故か女性を襲い、ヴァギナを思わせる殻の中に引き摺りこんだりしますが、蝸牛は雌雄同体。中で何が行なわれているやら、異様に気になります (笑)。
切り絵アニメでかなり泥臭いタッチ。技術的にもかなりザックリしています。しかし力強いのは、怪獣映画としての芯が通っているからだと感じました。
オチは少々、得体の知れちゃう脱力感があるんですが。農夫の涙が、蝸牛の巨大なアレに変わるまで…で締めてよかった気もします。
「ルネ・ラルー コンプリートDVD-BOX」に収録されていたものをみました。がこのパッケージ、コンプリートと言うなら処女作『猿の歯』と、トポールとの初コラボ作『死んだ時間』も入れて欲しかった。特に後者は、『ファンタスティック・プラネット』よりも、トポールの絵が生かされている、という意味で貴重な作品だと思います。
<2010.5.28記>