人生をかけて積み上げてきたものが何もかもなくなる恐ろしさたるや。
こんなことなら癌の方が良かった…
こんなDNAを残してごめんなさい、と子供達に頭を垂れて許しを請う姿
つらくて見ていられませんでした。
力任せにぶつけた怒り、手を繋いで行った公園、交わした約束や心からの謝罪も、残酷な白に次々塗り替わってしまう。
どんな悪い感情や思い出でもいいから残っててと願うのは、この病においては不毛なことなのでしょうか…
アルツハイマー病に触れて、本人のみならず家族友人にまで蔓延る悲しみは如何ばかりか。もし私だったら、親だったら、と考えては涙とため息が止まりませんでした。
ただ、なかには悲観だけではない。
「私たちは苦しんでいるのではありません。
世界の一部になろうとして、
かつての自分を取り戻そうとして闘っています。」
作中のスピーチがたった一つの希望みたいに輝いていて、観ている間、脳裏に焼き付いて離れませんでした。
たしかに、彼女は歯を食いしばって、必死に必死に闘っていました。
なんといっても、ジュリアン・ムーアの演技が秀逸。