ろくすそるす

ボーダーラインのろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

シカリオ、圧巻。
『灼熱の魂』の鬼才監督の放つ、メキシコ麻薬戦争を題材とした映画作品。凶悪事件を追ううちに、麻薬カルテルへの捜査のためメキシコに派遣されたFBI女性捜査官と彼女を支えるその相棒、メキシコの麻薬組織を混乱させるために、あらゆる手を使ってゆくサンダルのボス、ジョシュ・ブローリンの軽さも魅力的だが、何と言っても、それに協力する(暗躍する)復讐の男、ベニチオ・デル・トロの忍のごとき魅力に尽きる。限りなく黒に近いグレーの世界、倫理と公正の領域がボーダーレス化した組織内での女主人公の葛藤。構成力、テーマも良いし、どこから敵が射撃してきても、おかしくないような状況で緊迫感のある音楽が恐怖を煽る。特に序盤の交通渋滞のシーンの一触即発な状態、後半の潜入シーンは、生きた心地がしない!ラストの演出も秀逸。
マニラやブラジルなどの犯罪を描いた傑作もいくつかあるけれど、メキシコのフアレスを包む暴力の闇は特に恐ろしい。とはいえ、本作は警察組織メインなのでドキュメンタリー映画『皆殺しのバラッド』と併用して見ると、陽気なメロディで残虐な詩を歌うナルココリードの世界さながらの、見せしめに生首がボンネットに置かれ、子どもたちがサッカーで遊ぶすぐそばで銃声が聞こえるようなこの町の怖さがより一層伝わってくる。本作でも描かれているけれど、日常のすぐ横で勃発する暴力の異常性たるや……。
『カルテル・ランド』もぜひ見たい。