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ボーダーラインのkmtnのネタバレレビュー・内容・結末

ボーダーライン(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

メキシコ麻薬戦争についての作品って最近多い。
アメリカの真横だし、アメリカ人にとって身近な紛争地帯というか、リアリティあるんだろうな。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ作品は今回初めて。ブレードランナーもメッセージも観ないとなあ観ないとなあと思いつつ、結局未見。

私の正直な感想を言えば、前半は超面白いが、後半からは微妙。

前半の何が面白いかと言えば、単純明快なそのエグさに他ならない。
前半はとにかくワラワラと出て来る、死体の山が。
それもどの死体も体のパーツが欠損してる。拷問されて切り離されてるのだ(おそらく生きているうちに)。

ボーダーラインというタイトルから、善悪の境界線の話だろうと予測し、
ここまでエグいやつらに対抗するには、そりゃ主人公(エミリー・ブラント)が一線超えちゃうんだろうなあ、ワクワク。
つまりウルトラ・バイオレンスVSウルトラ・バイオレンス映画に違いない!
なんて思っていると、残念ながらそうはならないのである。

映画が始まってから終わるまで、とにかく主人公は傍観者の立場でしかない。
主人公なのに、現実で起きていることにまったくついていけてないし、対応もできない(当然意図的なんだろうが)。
私はこういう作品観るたびにコーエン兄弟の作品を思い出す。ファーゴっぽいなとも思った(主人公が女性ってだけな気もするが笑)

中盤で、主人公陣営に真っ当に正義を遂行する気のあるやつがいないのがわかって来る。
そしてアメリカ側の大きな陰謀が明らかになって行くのだが、
その陰謀というのは非常に邪悪で、70年代のイラン革命でもいいんだけど、とにかくアメリカがこれまで歴史上行って来た「如何にもCIA然」とした悪巧み。
いやぁ、アメリカさんって酷いわねえ、やぁねえって感じのやつ。

一方で、その陰謀は確かに壮大だし、ダークなんだけど、
麻薬カルテル側がやっている圧倒的なバイオレンスと比べると、CIA側の策略は行ってしまえば、机上の空論というか、絵に描いた餅というか……それ本当に実現可能なの?って感じがする。
はっきり言えばジョシュ・ブローリンの寝言である。

後半に行けばいくほど、前半のバイオレンス描写は鳴りを潜め、CIA側の出来るのか出来ないのかも不明瞭な策謀の話に終始するので、
観ていて、イマイチぴんとこない(お前の頭がパァだからだと言われればそうなんだろうけど)。
目には目を!じゃないが、そういうバイオレンスがバイオレンスを加速させるような話を期待していたので肩透かしだった。

トンネルでの銃撃戦とかも非常に緊張感があるものの、徒労感が全体的に立ち込めていて、
うーん、これ上手く行っても、結局事態は好転しないんでしょ?って感じ。
徒労感。
この映画を表すのにぴったりな気する。

もちろん、そういう徒労感溢れているが良い映画だって世の中には沢山ある(ゼア・ウィル・ビー・ブラッドとか?)
でも、あの麻薬カルテル側のああいう凄まじいバイオレンスを見せられると、謀略よりも、バイオレンスで対抗して欲しかったなあというのがこの映画に対して思うところなのである。

とは言え、割と好きなところもあって、
やっぱりベニチオ・デル・トロは噂通り、とっても良いです。マジもんやん。
アウトレイジに出てる俳優が全員本物に見えるみたいな。そんな感じ。

あと、主役のエミリー・ブラント。何が良いとは言いづらいが、とにかくエロいのは間違いない。素晴らしい。

そして、中盤の高速での撃ち合い。あれはとても良かった。

トータルすると良いところもあるし、悪いところあるといった感じ。
でも私個人としては悪いところの方が目に付いたかな。
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