MASH

グレイテスト・ショーマンのMASHのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
3.0
海外では観客の評価は非常に高い割に批評家の評価は芳しくない本作。僕の感想としてはかなり楽しめたと言える。正直P.Tバーナム自身のことやテーマ性の描き方は色々と良い側面にだけに偏りすぎているが、他のどの映画にも負けないくらいの情熱がこの映画にはあるのは確かだろう。

この映画の最大の売りであるミュージカル。素晴らしいの一言だ。歌や踊りはこれ以上になく盛り上がる。ほぼ全てがエンディング曲並みの盛り上がりなのは少々やり過ぎな気もするが、これらを観てて非常に楽しい。単純に歌や踊りに頼るのではなく、映像にもこだわっていたのも良かった。光や影の使い方やカラフルな色合いなどもミュージカルには欠かせないものだ。この映画はこのことをしっかりと分かっている。「人の多様性を受け入れよう」というポジティブなメッセージ性もかなり単純なものにはなっているが、一応伝わっては来る。

ただ伝記映画として観るとあまり出来がいいとは言えない。この映画は19世紀に実在したエンターテイナーであるP.T.バーナムを描いているのだが、19世紀のサーカスなんて見世物小屋的な部分が強かったのではないだろうか。この映画の様な"夢と希望が詰まったショー"というわけにはいかなかったはずだ。もちろんこの映画でも差別的な人々が登場するが、非常にあっさりと描いている。ポジティブなメッセージ自体はいいことだと思うが、事実を基にした映画としてはやや夢心地すぎるとも言える。というか、調べてみるとかなり事実を捻じ曲げていることがわかる。もっとP.T.バーナムのやったことの悪い側面だって描くべきだ。そうすれば逆に彼のやったことの意義というものがより明確になるだろう。そして、もっと観客に矛盾を突きつけ考えさせるような映画にだってできたはず。聞いてて心地の良いメッセージだが、この手のある種"人権"をテーマにした映画で一切の複雑さや矛盾がないのは得策ではない。

とはいえ、この映画にはそういう欠点を補える情熱がある。ヒュー・ジャックマンをはじめ、この映画に関わっている全ての人々が本気で作り上げたということがヒシヒシと伝わって来る。"人を幸せにするのが真の芸術"という言葉通り、何も高尚な映画ではないがエンタテインメント性に溢れている。完璧でなかったとしても、本気で人を楽しませようとして作ったものは人の心を震わせるものだ。僕みたいなひねくれ者もたまにはこんな"夢"を見るのもありなのかもしれない。
MASH

MASH