ソラアユム

グレイテスト・ショーマンのソラアユムのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
3.5
19世紀に活躍した興行師P・T・バーナムの成功を描くミュージカル作品




素晴らしい楽曲のつるべ打ちとヒュージャックマンのハマりっぷり含め中々楽しめました。
ただ、諸手をあげて賞賛!傑作!と言えないのが正直なところです。

先述した通り音楽は素晴らしいのだが、軒並みそこに付随するストーリーが淡白過ぎる。
ミュージカルシーンはエモーショナルなのにつなぎのストーリーが凄くあっさりしていてどうしても音楽に登場人物と一緒に乗っていけない。
さらに言えば根本的に脚本がダメダメ過ぎる。

どのエピソードをとってみてもじっくり描く気がないのか、どんどんストーリーが進んでいき、テンポが良いどころか、かえって作り手のストーリーテリングに対する不誠実さすら感じる。
ザックとゼンデイヤのエピソードで特にその傾向が強い。
すぐにこの2人はお互いに惹かれ合って恋仲になるんですよね。
その過程、恋の駆け引きを音楽に乗せて描いてこそのミュージカル映画でしょうが。
そこをかなりあっさり描いてしまっていて非常に残念。

『This is me』でマイノリティのエモーションが爆発するシーンは今作最大の見せ場であると同時に素晴らしいシーンでありました。
それなのに、承け手の反応の描き方が薄い。
何よりもそれに対して主人公であるバーナムの"答え"をちゃんと描いてくれないのはどうなのかと。
バーナムが実際にどの様な人物であったかはとりあえず置いておくにしても、物語の主人公である以上はこの問題に言及していかないと。
マイノリティやその他諸々の問題が終盤までほっとかれて最後は歌って踊れば全て良し〜♫ってアホか!と。
起承転結をちゃんと成立させましょう。
それができていないから、そもそもバーナムを主人公にしたこの物語の主軸がガタガタに揺らいでいる。

バーナムに限らず各々の登場人物をあっさり描き過ぎて、劇中の多くのミュージカルシーンが全然活きていない。
フリークスの中でも比較的にスポットが当てられていたキアラやゼンデイヤの人物像ですら全く掴めないのだから良い映画になるわけがない。
個性的なキャラは沢山登場するのに全員が全員"無個性"な描かれ方しかされていない。

バーナムのスキャンダル
義父との確執
ゼンデイヤのパートナーの黒人とザックの関係
などなど色々と中途半端な終わらせ方をしていると感じる。
結局最後は物語の登場人物全員がただ単にバーナムを甘やかすだけに終わるというのが非常に残念です。

冒頭の掴みは完璧というより他ないですし、素晴らしい音楽が数多く詰まった作品である事は間違いないです。



記録
2018年劇場鑑賞作品4本目