ナツメグ

ネオン・デーモンのナツメグのネタバレレビュー・内容・結末

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

ドライヴのニコラス・ウィンディング・レフン監督の映画ということで見てきました。
予告を見た印象だとブラックスワンとショーガールを混ぜた内容の映画なのかと思っていたのですが、感覚的にはデビットリンチ的にモデル業界で
完全な化け物じゃない富江を撮ったらこうなるといった感じの印象でした。


主演のエル・ファニングちゃんはこの作品を作る上で欠かせない、垢ぬけてないゆえのかわいらしさは本当にハマっていたと思います。
最初の彼女のあどけない笑顔から、勝ち誇った嘲笑までどれも表情が素晴らものでした。
他にも出演している女優さんは自分の顔を鏡で見てうっとりしてるのを納得できるほどどれも本当に美人ばかりで、実際のスーパーモデルのアビー・リー・カーショウもよくこの役で出演してくれたなというほど、体当たりの演技だったと思います。
それとちょっとしか出ないうえにあんな役回りのキアヌには少し笑ってしまいました。


今作の特徴である極彩色の使い方とネオンの光や、とにかく見てる側を不安にさせる音楽もデビットリンチやギャスパー・ノエのエンター・ザ・ボイドのような異世界感が出ててよかったと思います。


物語はモデル業界らしく美がテーマの作品だったと思います。
主人公のジェシーは特技は一切ないのですが、一目見ただけで男女問わず誰もが惚れてしまうという童話のような人物で、レフン監督はドライヴも正体不明で人間じゃないようなキャラクターが主人公だったので、もしかしたらそういうキャラクターが好きなのかもしれません。


そのジェシーの天然のかわいらしさは、良いことだけでなく悪いことも引き寄せてしまい、成功と恐怖の中彼女はモデル業界にどんどん入って行くのですが、元々美だけには絶対的な自信を持っていた彼女はどんどんその傲慢さを膨らましいき、彼氏が外見よりも中身というのも聞かず、戻れない世界へ突入していくといった内容だったと思います。


最高潮までに傲慢になったジェシーは美しくなるために拒食や整形などは、私という完璧な存在の模造品になるための努力という、バキの範馬勇次郎のようなことを言うのですが、この作品での完璧な美しさというのは、創意工夫をするということ自体が美への不純物いう価値観なのだと思います。
要するに生まれがすべてという身もふたもない話なのでしょう。


その結果美しさが生きていくための手段であり、自分たちの美しさを何よりも大切に思っている彼女たちのほうが、男よりも若く天然の美を持つ彼女の力に魅かれていき、彼女たちはまさにセックスと食事のためにジェシーを殺害してしまいます。


食人文化のある民族では、相手を称えると同時に相手の力を手に入れるために食べることがあるらしく、彼女らもジェシーの力を手に入れるため食人行為をしたのですが、サラはジェシーの力に適合できなかったために、あのようなラストを迎えてしまったという展開だと自分は解釈しました。


ジェシーの最後が最初のシーンとつながっていたり美しいだけではなく繋がりのあるシーンも多いのですが、やたら出てくる三角の意味が解らなかったり、自分の読み取りが全然できてないこともわかります。
しかし個人的にはこの映画はわかりにくいけど物語を映像で語る作品という訳ではなく、好きな映像を撮っただけというシーンが多いような気がします。
ドライヴと違って話はゆっくりしていてかなりアート映画寄りの作品ということもあり、映像的には素晴らしいけれどそこまで自分はハマれませんでした。


それにしてもモデル業界の話でネクロフィリアとカニバリズムが出てくるとは思わなかった。
ナツメグ

ナツメグ