ジジイ

パプーシャの黒い瞳のジジイのレビュー・感想・評価

パプーシャの黒い瞳(2013年製作の映画)
4.0
面白かった。モノクロームの風景が超絶美しいのだが、実は予算の問題で白黒にせざるを得なかったというから驚く。映画は第二次大戦前後のポーランドでさまざまな迫害を受けるロマ(ジプシー)の社会を描き出す。その中で白人の使う文字に興味を持ち、その言葉を読み書きできるようになった少女が、やがてロマの日々の暮らしや自然、感情を詩に表現するようになり…という実話の物語。文字が不浄であるという思想はロマの起源と言われる古代インドの宗教に起因するものらしい。しかし言語化され外の世界にその文化や思想が明かされることで、一体どんな致命的な不都合が彼らにもたらされるのか、正直極東のアジア人にはまるで理解できなかった。あるいは言語化された時点で民族全体が呪われてしまうという底知れぬ恐怖が彼らを支配していたのか。いずれにしても僕たちがその文化に触れることを可能にしてくれたパプーシャの作品は、それと引き換えに彼女が負うことになった代償があまりにも大きすぎて切なかった。
ジジイ

ジジイ