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愛しのグランマのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

愛しのグランマ(2015年製作の映画)
3.6
【実はクレジットカード社会を皮肉ったLGBT映画】
Netflixで配信されている映画は非常に多く、それも日本では知名度の低い監督や、地域の作品が多いので、映画オタクのブンブンでも「観るか否かで」悩んでしまう。そんな時は、TwitterでオススメのNetflix配信映画を調べるようにしている。そんな矢先に、「Grandma」が面白いという情報を入手したので早速挑戦してみました。

☆「愛しのグランマ」あらすじ☆
レズビアンの詩人エル・リードは、パートナーと死別し、新しいパートナーとは上手くいかない状況だった。そんな彼女の前に孫が頼み事をしにやってくる。それは中絶の為にお金を工面するという内容だった。しかし、エルには現金もクレジットカードもない。そこで、資金繰りの旅に出ることにするが...

☆実はクレジットカード社会を皮肉った作品だった<☆
あらすじを読む限り、LGBT映画、あるいは純粋なロードムービーと思うでしょう。確かに間違いはない。レズビアンであるおばあちゃんの自由奔放な人生を通じて、少女が少し大人になるというハートウォーミングドラマです。監督も「アバウト・ア・ボーイ」(実は「マッド・マックス:怒りのデス・ロード」に出てくるニュークスこそニコラス・ホルト君が少年役として出演している)のポール・ワイツだけに、シリアスな内容を颯爽軽やかに演出していて心地よい。

ただ、本作が「アバウト・ア・ボーイ」と違うところは、裏テーマとして非常に面白いものを物語に仕込んでいるというところです。というのも、物語を追っていくと、やたらとクレジットカードの話が出てきます。おばあちゃんは、生活環境を変えようと、クレジットカードを切り刻み、アート作品にしてしまった。それ故に、孫の中絶費用を工面すべく旅に出る羽目になるのだが、行く先々で「クレジットカードで払えよ」みたいな話が出てくる。

確かに、日本と比べると欧米はクレジットカード大国です。フランス留学中なんか、マクドナルドレベル、いやコンビニレベルの買い物ですらクレジットカードを使っていた。そして、アメリカは重度のクレジットカード依存社会です。クレジットカードのグレードが「信頼」として、社会的地位を決めており、また国民一人あたり、何百万円もの借金を抱えながら生きている。

なので、生活とクレジットカードが密接に結びついているのです。その状況に本作はある種問題提起をしているといえる。中絶費用。クレジットカードを使わずに、自分自身で向いてお金を工面する。お金の重みを肌で体感する。その裏テーマを入れることで、一見軽やかに見える中絶物語に深みが増します。中絶の辛さが非常に効果的に伝わってきます。リリー・トムリンのおばあちゃん演技の良さもあって大満足な作品でした。

いやー言い作品を観た!
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