MasaichiYaguchi

エール!のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

エール!(2014年製作の映画)
4.0
フランスの片田舎で酪農業を営むベリエ家を描いた本作には、思わず笑ってしまうユーモアと、心揺さぶる歌、そして胸が熱くなる愛がある。
このベリエ家は、ヒロインで長女のポーラ以外、両親も弟も耳が聴こえない。
聾唖者の一家というと、会話の無い静かな家庭をイメージするが、ベリエ家には様々な音が溢れ、それが恰も家族の躍動のように感じられる。
身体にハンディキャップを持っていると気後れしたり、物理的な問題で社会の第一線に出ていくのが難しいことがあるが、この一家は積局的に社会と関わっていく。
この家族を様々な面でアシストしているのが長女のポーラ。
そんな彼女と一家に大きな変化をもたらす出会いが訪れる。
それは歌との出会い。
出会いはポーラが一目惚れした男の子がコーラス部だったからという不純な動機によるものだったが、理由はどうあれ、このコーラス部で彼女は自分の内なる“歌”という才能に目覚めていく。
しかし皮肉なことに、一番身近で自分の才能を認めて欲しい家族は、それを理解することが出来ない。
折しも彼女の才能を見出した音楽教師がパリの音楽学校へのオーディションを勧めるなかで、彼女は自分の夢と大好きな家族との間で板挟みとなって葛藤する。
主演のルアンヌ・エメラはこのポーラを瑞々しく等身大で演じていて共感してしまう。
そして彼女の歌の素晴らしさ!
特に終盤で披露される「青春の翼」はヒロインの心情にオーバーラップして目頭が熱くなってくる。
子供は何時かは巣立つ。
ベリエ家の物語は、家族や恩師からの温かいエールの中で一人の少女が成長していく様をユーモアを交え、心を揺さぶる歌と共に描いている。
この作品を観ると、改めて「歌の力」や「家族の絆」の素晴らしさを感じてしまいます。