転生Moljiana

みかんの丘の転生Moljianaのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
4.3
『とうもろこしの島』と同時上映だったので久しぶりの2本連続視聴してきました。観たのは1ヶ月前でしたが、もうね……「此処まで面白い映画って有るんだ……。」って位ビックリした所為でどうも書く気になれなかった作品。

舞台は当時(1980年代)、グルジア内に存在したアブバジア自治共和国。此処ではジョージアとアブバジア間で紛争が勃発し、様々な人種や民族を巻き込み凄惨な一騎討ちが行われていた。そんな中、蜜柑の収穫に興じていたイヴォとマルゴスが、銃撃戦の後に負傷した(アブバジアを支援する)チェチェン人とジョージア人の兵士を助ける。そしてイヴォはお互いを憎みあう兵士達に「私の家で殺し合いはさせない」と不殺の約束を結ばせる……

粗筋長過ぎましたね。こんな感じで舞台設定や人種問題を組み込んだ脚本がやや理解し辛い今作。ですが、テーマは「戦争に於ける人間性」とかなり一貫的。仲間の仇討ちや独自解釈の歴史を振りかざして相手側を問答無用で殺そうとする最初の頃の2人は正に「人間性を失った人間」。しかし徹底して不殺を望み、時期を経るに至って人では非る者達が段々と人間性を取り戻し、最終的には感動的と言う他無い位2人が驚くべき行動を取る迄が兎に角劇的で素晴らしい。最後のイヴォの台詞回しでも「何故同じ人間同士が殺し合うのか?」という映画を観てて皆思うであろう事を説得力込みで突き付けてくれるのも見事。

「世界は互いに閉じたままで、いまだに出会う事がない。」……かもしれない。でも、イヴォや2人の兵士みたいな人が少しでも増えてくれれば、世界はもっとマシになるかもしれない。どんな時でも人間性を失ってはいけない、失った後には破滅しかない。戦争の中でも自らの日常である蜜柑の収穫を続けている所とか含めて、兎に角『この世界の片隅に』に通ずる物が有った作品。ラストシークエンスでかかる音楽も爽やかでした。

どうも上手く伝えられませんでしたが、この辺で。もっと話したい事もありましたが『とうもろこしの島』のレビューに回したいと思います。今年公開された戦争映画の傑作は『この世界の片隅に』で打ち止めと考えている人はかなり勿体無いので絶対オススメの作品。

<2016年ベスト8位>
転生Moljiana

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