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スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明けのcorsbyのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

レイ・『スカイウォーカー』である必要性は、本当にあったのか

EP78を観て一回、EP4〜8まで観直してもう一回鑑賞。一回目はパルパティーンが誰かも分からないままの鑑賞だったので、さすがに二回目は一回目より楽しめるというか、理解できた。
各ドルビーシネマ、4DX3Dで鑑賞。ドルビーシネマの白黒を中心とした色彩が生かされており、4DXもこれまで体感した中で一番揺れがあり(タイミングも良い)、どちらも満足。4DXは今回光が多用されており、個人的には楽しめたが点滅が苦手な人は注意が必要か。逆に冒頭のカイロレン点滅のインパクトは少し薄れていた印象。


ここまでの二作で“誰かに仕えることのない”存在となったカイロレン、“何者でもない”者となったレイ。そしてその前提が真っ向から崩されるパルパティーンの存在。アナキンの(文字通り)決死の決断をはじめ、これまでが無駄にも感じられる、覆される舞台設定には些か不満。だが、レンとレイが手を組むとして、敵となる存在が居ないことは事実なので、やはりこうするしかなかったのか……。
しかし、レンはパルパティーンに仕えるに留まらず、前作に続きレイとの帝国を目指すのだが、全体的にレンとアナキンが重なる。そのため、同じことを繰り返している印象を受ける。とは言え、宇宙征服くらいしか目指すものもないので、これも仕方がないのか……。とは言え、死に様まで同じく『主人公を助けて亡くなる』というのが残念。欲を言えば生きていてほしかったし、レイとレンの存在は、互いに、互いが生きられる場所であってほしかった。

レイとレン、実質上の二人の主人公の関係性について、わたし自身は兄弟のような関係性を感じていた。恋人よりも、双子よりも遠いが、他人や友人よりは遥かに近い関係。今作では見方によってはそのような関係性ではないことが示されるようなキスシーンがあった。制作人の意図は不明だが、関係性を限定するような選択肢を選んだことが残念。
しかし、二人のバトルシーンは全て圧巻。遺跡や雪の積もる木々などでは場を生かした戦闘が美しい。最初の戦闘シーンでは、亡霊にセイバーを振るうカイロレンの、振り切れない、どこか辛そうで寂しげな表情がとても良い。続く水上での戦闘では、感情に任せて勢いのまま立ち向かうレイと冷静にも見えるレンとの対比が光る。母からの語りかけにレンが動きを止める箇所でその対比が特に生きる。共闘シーンでは過去二作で積み上げてきた場面切り替えがこんなところで、こんな風に使われるとは! という驚きと、無言の頷きが完全な信頼の基に行われたことを裏付けるアンサー、もう立ち上がりたいほど興奮した。

三作を通してだが、カイロレンは表情の揺らぎが本当に上手い。目の潤みや、パーツの微妙な動きが彼の不完全さを十二分に表現し、存分に心を揺さぶられる。怒り、そして悲しみや苦しみに満たされた人物かと思えば、ベン・ソロとしての彼は非常に生き生きした表情を見せてくれる。極め付けはやはり彼の最期の瞬間で、言葉を発しないからこそ、死ということを悩んだ末に決意したのか、もう決めていたのか、等、観客が自由に想像できる、演技の幅がある。文句なしのEP7〜9主演男優賞。
ハンソロの文字通り最後の見せ場も、親としてのハンソロが良く表現されている。親子の語らいは決して現実になることがないシーンで、レンの妄想であるからこそ、途方もない切なさを生み出している。

決意と切なさが滲む場面として、あの時できなかったことを、と思うことはできないが、C-3POがメモリー消去を承諾したシーンが印象深く思い出される。
「最後にもう一度」。彼は今はメモリーの片隅にもないアナキンを思い出すことは永遠になく、最後に創造主で最初の友人の姿をその目に“焼き付ける”ことすらできなかった。そのことを知っているのは最早観客だけというのが、また切ない。
(まあその後すぐに戻るんですけどね)

人物間の関係性について、今作はフィンとポーの関係性が良く描かれていた。偶然出会い意気投合した彼らが本作では引き続き息のあったコンビネーションを見せてくれるだけではなく、過去二作で積み重ねた信頼をも感じさせる箇所が随所に(特に敵艦を撃墜するシーンや、最後の戦いから帰還したシーン)現れており、何なら最もEP7〜9の積み重ねを感じたと言っても過言でない。フィンのポーに対する“知らなかった事実”も、ポーのフィンに対する“言おうとしたことへの追及”も、二人の関係性があるからこそ生きたシーンになっている。(最も、ポーの過去についての設定は本当に運び屋であるべきだったか不明で、フィンの『言おうとしたこと』は結局明かされないままという中途半端なものだったが…)
二人とレイの関係性も良かった。フィンとレイは上手く友達に収まった印象。
フィンの恋愛はレイともローズともどっちつかずで、結果どちらととも何もなかったかのような結末。ローズは前作での健闘の割に扱いが少なく、せっかくのキャラクターが勿体ない。(EP7〜9はキャラクターが良い割に話の展開がバラバラで、全員勿体ないですが……)
今作でスパイとなったハックス将軍にしても、もう少しキャラクターの掘り下げが欲しかった印象。しかし「カイロレンが負けるところを見たいから」というシンプルすぎる動機は一周回って、これが彼らしさなのか…と思わせられる。そしてEP9でカイロレンと同じく彼にも死が訪れたことを考えると、本当にハックスというキャラクターはカイロレンと共にあるために拵えられたのかとも考えさせられる。


これまでの前提の全てが崩れ、そして再構築された主人公二人の関係があった。

私はやはり、最後に堂々とスカイウォーカーを名乗らせるのであれば、それはカイロレンにこそ相応しかったのではないかと思う。「血の繋がりがある」彼だからこそ、ダースベイダーの孫であり、ハンソロとレイアの息子だからこそ、背負うことができる継承が、改心した彼の成すべきことがそこにあるのではないか。
さらに言えば、誰かがスカイウォーカーを『継ぐ』必要は全くもって無かったと思う。どうしてもレイに姓としての何かを背負わせる必要があるのであれば、それは『パルパティーン』であるべきであり、彼女がパルパティーンを名乗るからこそ、「血は関係ない」ことの証明になり、それこそが悪しき継承の終わりになるのではないだろうか。
レイ・パルパティーンにしか背負えない断絶があり、ベン・スカイウォーカーにしか背負えない継続がある。私はそう感じた。


(気になった点を思い出したので、蛇足ですが書き足し。
最終戦のご先祖応援団の中でアナキンが「フォースにバランスをもたらすんだ、僕のように」みたいなことを言ってるけど、成長してからバランスもたらせたタイミングあったか……?)
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