一人旅

ぼくとアールと彼女のさよならの一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
アルフォンソ・ゴメス=レホン監督作。

アメリカの作家ジェシー・アンドリューズによる2012年発表の小説「Me and Earl and the Dying Girl」を原作者のアンドリューズ自ら脚色、新鋭アルフォンソ・ゴメス=レホン監督が映画化した青春ドラマで、本作は2015年のサンダンス映画祭でグランプリと観客賞のW受賞を果たしています。

ペンシルベニア州ピッツバーグを舞台に、幼馴染の黒人少年アールとの自主映画撮影を趣味としている高校三年生の大人しい主人公グレッグと、白血病を患う同級生の女の子レイチェルとの関わりを描いた青春ドラマの傑作で、母親に言われて渋々レイチェルを見舞うようになった主人公が彼女と過ごす時間を積み重ねていく中で次第に彼女との間で固い友情と絆を育んでいく様子とその後を描いていきます。

いわゆる“難病モノ”にジャンルされる作品ですが、決して感傷的ではなく、非リア充の少年と不治の病に冒された女の子とのさらりとした友情の形成とそれぞれの旅立ちをユーモアを織り交ぜながらライトな感覚で描いた等身大の青春映画となっていて、主人公と幼馴染の少年が共同で撮影する名作映画のパロディ自主映画の数々が通な映画ファンの心をくすぐってきますし、死を永遠の別れとは認めない優しさと希望に満ちた結末が穏やかな感動と深い余韻を残してくれます。

『ゴーストワールド』(2001)、『スウィート17モンスター』(2016)、『レディ・バード』(2017)のように、クラスの中心人物ではない少年少女のささやかな日常と成長を優しい眼差しで見つめた紛れもない青春映画の傑作で、主演のトーマス・マン、オリヴィア・クック、RJ・サイラーら若手俳優が肩肘張らない等身大の演技を魅せています。
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