きえ

リトル・ボーイ 小さなボクと戦争のきえのレビュー・感想・評価

4.6
第二次世界大戦中のアメリカ西海岸の小さな町を舞台に、”ちっちゃな”男の子の目を通して戦争の不条理を描いた秀作。愛する人に真っ直ぐ思いを寄せる姿と差別も偏見も持たない子供の視点が胸を熱くした。

男の子にとって成長過程で必要なのは”ヒーロー”だと思う。絶対的憧れや尊敬に近付きたくて男の子は大人になって行くんだと思う。その意味でこの作品は上手い組み立てになってた。

少年にとってのヒーローは、憧れであり尊敬であり時に相棒でもある父親。
この物語は戦争に召集された父親を再びヒーローとして取り戻すまでを主軸に描かれている。大人になるに従って薄らいでしまった直向きさに心打たれた。

前半はオールディでポップな映像と音楽が”THEアメリカン”な明るい作風なのだけど、途中で音楽で言う所の”変調”して行く。その時初めてタイトル『リトル・ボーイ』のもう1つの意味を知った。
祖父母宅が広島なので戦争の話は身近に聞いて育ったつもりでいたけど知らない事実だった(恥)

そしてこの物語には大切なキーマンが登場する。ヒーローである父親不在の少年は、差別と偏見に晒される日系人男性との触れ合いの中で大きく成長していくのだ。

正直日本人として観ていて辛いシーンや聞いててキツい言葉も出てくる。反日?なんて思いながら観続けて行くと、そこにはメキシコ人監督の公平な視点があった。
日本にもアメリカにも寄る事なく、それぞれの立場からの戦争の不条理を映像化している。そこが素晴らしい。

更に素晴らしいのは、重いテーマ性を持ちながら、非常に魅力的な子役を使いファンタジーとも言える物語に仕上がっている所。考えさせる要素を幾つも放り込みながら決して重くならず軽くもならず、観終わった後に深く響いてくる。感動を与えながら観る者それぞれに問う…最後は涙でボロボロだった。観て良かったと心から思えた作品。

追記:観終わった後の映画満足度ランキングでは上位に来てた。納得の結果です。
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