プリミティブで無秩序な世界が描かれたコクトーの原作が、その独特の質感が損なわれることなく映像化されていることに感動を覚えた。彼が口もお金も出した賜物なのだとしても。
窒息しそうなほど親密で険悪な匂いに満ちた子供部屋。姉弟は魂のレベルで深く愛しあい深く傷つけあう。エリザベートの残酷さはラストに向け加速する。蜘蛛は巣が完成するまでせっせと糸を吐き出し続けなければならない。私が心を持っていかれた原作のラスト数ページの描写はほぼカットされているけれども、幻覚と愛憎が渾然一体となり突然幕が下りる映画の終わり方もすばらしいと思った。バッハの音楽が最高。
バッハ 『4台のハープシコード協奏曲イ短調BWV1605』