くりふ

花火のくりふのレビュー・感想・評価

花火(1947年製作の映画)
4.0
【射精するように撮ってみた】

むかしむかし出会った頃は、ケネス・アンガーにはあまり、接点を感じなかった。が、いま見ればそんなコトもないと思うので、掘り返していきたいと思います。

これは実質、世に出た処女作ですね。17歳と書かれた記事も見ますが、USC在籍時の20歳の頃、撮ったものだと思います。

久しぶりの再見で、素直に心地よくて、共感してしまった。

自分には他人事だが、若いゲイならこういう妄想に浸るだろうな、とよくわかるし、実に気持ちよさそうに撮り、なぐり描いている。

逆に、自分ごとに近かったら、当たり前すぎて感心しないのかもしれない。

一方、1947年当時では、無言含めてゲイへの抑圧は物凄かったろうから、捻じれ具合も素直に出ているとおもう。

自分が華奢だったら、筋骨たくましい水兵、しかも大勢に陵辱され、さらに引き裂かれ殺されてみたい…なんていう妄想、すっげえわかり易い!

そして、主人公青年の体に迸る、女をおもわせる鮮血の上を、精液をおもわせるミルクが覆ってゆく…。

こんな危なっかしい時代に、そんな欲望を素直に映画化して人に見せちゃうなんて、根っから表現者なのだろうね。

でも、夢オチのように締めて、映画を少し冷ませてから終わらせているのは、ちゃんとバランス感覚もあるのだろうと思います。

うたた寝して、半分自慰しながら浸る、白日夢のような想いで…。

一方、音楽に使われた「ローマの祭り」が、往年のハリウッド映画のパロディのようにも響き、のちのアンガー名著「ハリウッド・バビロン」をも連想させてしまうのでした。

たいへん気持ちようございました。

<2022.9.11記>
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