Torichock

リアル鬼ごっこのTorichockのレビュー・感想・評価

リアル鬼ごっこ(2015年製作の映画)
3.9
「リアル鬼ごっこ」

Twitterで"リアル鬼ごっこ"と検索すると、全国津々浦々のJKどもが、

途中で寝たケドどうこう
とか、
グロくてわけわかなかった
とか
こんなのリアル鬼ごっこじゃない

などのdisとともに、自撮り写真やらプリクラやらがやたらとアップされていて、あぁ日本って本当に平和な国だなぁとか思える鑑賞後のほっこりオマケも付いてきました。

ところで、映画自体はそんなJKさん達の意見とは真逆で、個人的には満足の作品でした。
最初の、バス惨殺シークエンスは、今まで見たことないフレッシュな映像でした。カッコいい!
園子温映画って、"新宿スワン"みたいな駄作でも、ハッとするかっこいいシーンが必ずあるのが信頼できます。

トリンドル玲奈は演技悪くなかったですよ。
86分もずっと観てると、この子って実は全然可愛くないなと思ってきましたけど。ハーフ枠では好きな顔だったんですけど、もうちょっとブスに観えてきました。でも良かったですよ!途中で思いっきりビンタされるシーンは、観客の気持ちと一致したと同時に、トリンドル玲奈のリアクションがたまらなかったですね。
あとは、園子温組常連の真野ちゃんは安定でした。"新宿スワン"の200倍は可愛かったです。
篠田麻里子はまぁなんでもいいです。

というかなんか、手放しに批難されててムカつくので、すごく真面目に紐解いてやろうと思いましたね。
原作を無視して、園子温自身が脚本を書いたことから、リアル鬼ごっこなんてものは、名前を借りただけなのは目に見えてましたしね。

まず、この物語の特異な主人公性は、
これは誰にでも当てはまることだよという釘差しと思いました。
世の中に起こる色々な事件を、"うちらは関係なくね?"と、

"丘を越え行こうよ♪"なんて歌ってると、突然ぶっ殺される世界にいるという示唆でもあるということ。

そして、結局のところ、僕らは何かの大きなコマにしか過ぎないということ。
JKを含め、大きな子供と揶揄される多くの成人(肉体的)は、自分が世界の中心で自分の思い通りに世界は動いて、自分が嫌なら辞めることも簡単に生きていけると思ってる人がいる。
うまくいかなかったら、鬱だコミュ症だなんだと自分の殻に閉じこもって逃げようとする。思ったものがこないと、"こんなの原作と違う"だ、"思ってたのと違う"だ言うんですよ。ムカつくわ、刺し殺したいわ!思ってたものと違う方が嬉しくないですか?まぁいいや。

とにかく、どの世界に逃げようとも、そんなものから逃げ切ることはできない、諦めた瞬間首も飛ぶし、バラバラに殺される世界なんでしょう、どこでも。

でもだからって希望を持つなとは言っていない。
この映画で何回も執拗に繰り返されるセリフ。

"シュールに負けるな!"

それは、そんなシュール=超現実的な世界にひれ伏すなということだと思うんです。
何かをすれば何かが変わる、それは大きな波紋になって世界を変える可能性だってあるんだから、シュールに負けるな!という、園子温監督の強いメッセージじゃないでしょうか?

何もしないで文句ばっか垂れるのはやめて、自分を操る大きな何かを刺し殺してやるくらいの意気込みで生きていけ的な何かを感じましたよ、僕は。

あとは、この映画(シュール)に負けるな!という園子温監督からケンカを売られてるということでもあると思うんですどね。

つまらない、よく分からない、こんなの思ってたのと違うと、あるかないかもわからない自己の殻に閉じこもって、シャッターを下ろしてしまった時点で、この映画に負けたことになるんでしょう!
ぼくは、ぼくはまだ、シュール(超現実的)に負けずに戦って行こうと決意を新たにしました!


とはいえ、斎藤工が大オチで大爆笑を誘い、全てをチャラにしてくれる愛のある作品でもありました。
何も考えず、女子高生のパンチラと、スプラッターシーンを、バカ丸出しで見るもよし!
特に、日曜日の渋谷シネパレスで鑑賞したんですが、女子高生と若いカップルしかいない!そして、上映終了後の、

こんなはずじゃなかった

という表情をたくさん観れたのが、黒沢清の"リアル〜完全なる首長竜の日〜"以来だったので、そういった意味でも、若者が集う待ちで見るのがオススメですね!
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