砂

エンドレス・ポエトリーの砂のレビュー・感想・評価

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)
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アレハンドロ・ホドロフスキーの自叙伝的映画。
普通の老人の回顧録とはやはり根本的な部分から違う。前作、「リアリティのダンス」から続いたところから話は始まる。
本作での主題は、「詩」と、「アイデンティティ」
詩に目覚めた少年時代から、フランスに渡航するまでを描く。

自叙伝を映画にして、奇妙で不思議な極彩色の世界になる人は多くないだろう。物語としては青春時代を描いたものなのだが、登場する人は奇人ばかりだし、モチーフも変わったものばかり。
だが、自著の「リアリティのダンス(映画と同じタイトルだが、あちらはこの著書の一部)」を読んだ限りでは概ね実際にあったことであり、彼を取り巻いていた世界がどのようなもので、彼がどのように捉えていたかが映画的演出はあれど誠実に描かれているという印象を受ける。

小人症の人、詩人、サーカス、フェチズム、人形、タロット、カーニバルなどなど…後のホドロフスキーを形作るものがどのようなルーツを持っていた伺い知ることが出来る。

映画としてもシュールでなかなかブッ飛んでいて面白い。
そして、自叙伝でありながら自省録でもある。最後の父親との別れを「今の」ホドロフスキーが回顧するシーンは、少し胸にくるものがあった。取り返せない過去を、作品によって赦したのである。

かなり高齢になってなお健在で、唯一無二の作品を作るホドロフスキー。時代は変わってしまったが、長生きして続編も作ってほしい。
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