さすらいの旅人

黄金のアデーレ 名画の帰還のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

4.2
名画は何も語らないが、家族の思い出の宝庫。Amazon Prime 配信視聴。

この映画は久しぶりに感動した作品だ。
オーストリアのモナリザと言われる名画「黄金のアデール」にまつわる歴史とそれを所有していた家族の悲劇。そして国を超えての奪還までを見事に映像化している。しかも、実話なのでいっそう感動が深まる。
奪還までの法廷闘争も二転三転のスリリングな展開で面白く、法廷映画としても観れる。

本作のシナリオ構成が緻密であり、現在や過去を上手い具合に網羅して編集している。特に主人公エレナの家族に対する愛情は、過去の経験を丁寧に描いており、その結果エレナに感情移入しやすかった。やはり、映画の出来は感情移入に左右されると改めて思った。
ただ、この映画で気になったのが、相手国オーストリアの描写。なんか血も涙もない悪人のように描いており、もう少し国の事情などのエピソードを入れても良かったような気がする。

絵画を奪還するアデールの姪エレナ役をベテランのヘレン・ミレイが演じる。それを補佐する弁護士役はライアン・レイノルズ。いずれも、熱のこもった名演技であった。それにしても、ヘレン・ミレイの凛々しい姿は品格があり、老人を感じさせないくらい格好いい。ライアン・レイノルズは最初頼りない弁護士であったが、ラストは堂々として頼りがいある人物を見事に演じていた。この映画の成功はこの二人の演技によるものと言っても過言でない。

正直、この映画を観るまではこの名画の事や裁判の事は全く知らなかった。しかし、これを見て、私の知らない歴史に新たな1ページが加わった。これが映画の面白さであり、映画はたった2時間の人生経験なのだ。