なちゅん

黄金のアデーレ 名画の帰還のなちゅんのレビュー・感想・評価

4.4
素晴らしかった。
過去を隠蔽し自らを正当化するのはどこの国も同じ。それに対してどれだけの人が立ち上がれるか。
マリアはまだあのアデーレの肖像が自分の叔母のものだと知っていたからよかった。誰の手に属するもので、どのように奪われたかを知っていたからよかった。叔母や叔父の遺言書が残されていたからよかった。だから正当性を持って、自分の家系に属するものだと言い切ることができた。
でもそのほか多くの、ナチスによって略奪された10万点にも及ぶ芸術の数々に、今も正当な持ち主はいるのだろうか。離散を強いられた被害者の、犠牲者の子孫は、ルーツを追うこともできず、自身に返還を求める権利があることも知らずに今を生きているのではないか。
過去は消せないけれど、今それを正すことはできる。それはナチスとユダヤの間のものだけではなく、すべてにおいて、そう。
事実を認めないのも、事実をねじ曲げるのも、過去から逃れようとしているという点では同じ。恥を知りなさい、とマリアなら言うだろう。

マックス・アイアンズ、やはりかっこいいな。そしてまたダニエル・ブリュールを疑ってかかってしまった。
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