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ピクニックのandesのレビュー・感想・評価

ピクニック(1936年製作の映画)
4.0
未完という現実がこれほど残念な作品はないだろうし、とはいえ不完全な形でさえも日の目を見れて良かったという気持ちもある。画面の端々に繊細で瑞々しい感性が溢れており、モノクロながら鮮やかな映像が提示される。
わずか40分で濃密な人間模様と豊かな映像表現が堪能できる。主人公2人は人生で忘れてない体験をするし、それは2人しか気づいていない。「嵐が来そうだ」という表現が登場人物の心象風景を表すのは定番だが、フリ・オチとも完璧に完璧に機能している。
映像も美しく素晴らしい。有名な「ブランコ」のシーンは、その意外性と構図の見事さ、ヒロインに対する「想い」と何かが「起こり得る」という予感を観客にも想起させる。冒頭の「釣り竿」から展開を示唆しているし、後半にかけての映像のテンションは尋常じゃない。
未完ゆえに評価は非常に難しいが、それ故、異様な迫力もある。また、巨匠の神技が残されたことに感謝したい気持ちになる。
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