美しい田舎の景色の中で展開する流動的な男女の関係。
新しい出会いや心の揺れ動きを経て報われない恋を経験する彼らの姿からは、この映画の魅力である「切ない失恋の悲しみの面に重点を置いた豊かな情緒」を味わうことができると同時に、社会規範による抑圧や解放のメッセージも受け取れる。
川や雨といった「水」のモチーフによって移り変わる男女の関係や心情、運命の流れに身を任せる様が象徴的に表現されているのも素敵。深度の深い画面構成も印象に残る。
美しい景色の中に、ルノワール自身の記憶が反映されているというのもとっても良い。父オーギュスト・ルノワールの<ブランコ>や<田舎のダンス>をはじめ、エドゥアール・マネの<草上の昼食>など主に印象派の画家たちの作品をオマージュしたと思われる風景や衣装がお洒落。特に室内から青年2人がブランコに乗っている婦人たちを見る場面は、外に広がる美しい景色と額縁的な役割を果たしている窓枠によって、そのまんま絵画のようなショットが生まれていた。