MasaichiYaguchi

ラスト・ナイツのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ラスト・ナイツ(2015年製作の映画)
3.7
サプライズで上映終了後に紀里谷監督の舞台挨拶があった試写会で鑑賞。
本作は一言で表現するとハリウッド版忠臣蔵。
ただこの忠臣蔵は国際色豊かだ。
大石内蔵助に該当するライデンをクライヴ・オーウェン、浅野内匠頭より高潔で名君のバルトークをモーガン・フリーマン、吉良上野介より小心でドメスティック・バイオレンスなギザ・モットをアクセル・ヘニー、清水一学的な役割の伊藤を伊原剛志さん、これら主要キャストにイランやノルウェー、韓国を含め総勢17カ国に及ぶキャストとスタッフが結集した、ある意味“無国籍”な忠臣蔵。
このインターナショナルなキャスティングの意図は、忠臣蔵を世界に通用する物語にしたかったという監督の言葉で納得した。
中世を時代背景にしている以外“無国籍”な物語だが、墨絵を思わせる幕開けシーンをはじめとして色味の少ない耽美な映像がアジアンテイストを感じさせ、それが理不尽に踏みつけられた騎士道を取り戻そうとする男たちの姿を重厚に浮き彫りにしている。
本作では、この男たちの誇りをかけた激しい剣戟が繰り広げられるのだが、どう見ても日本のチャンバラ、本格的な殺陣の世界だ。
そして忠臣蔵の最大の山場“討ち入り”は、ハリウッドのエンターテインメント映画に翻案されているのでスケールアップされ、スペクタクルに展開されていてハラハラ、ドキドキする。
紀里谷監督は挨拶の中で「子供のいない私にとって映画が我が子です」と話されていたが、監督の作品に対する愛と言って良い強い思い、その思いに応えるようなキャストたちの熱演で、武士道と騎士道の違いを越えて描かれた高い志や熱い魂が我々の心に響いてくる。