凛太朗

怪物はささやくの凛太朗のレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.8
パトリック・ネスによる児童文学小説を映画化したダーク・ファンタジー。脚本もパトリック・ネスが担当。

病魔に侵された母親のエリザベス(フェリシティ・ジョーンズ)と共に暮らす孤独な少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)は、夜な夜な悪夢に魘されていたのだが、ある日の12:07に樹木の姿をした巨大な怪物(声:リーアム・ニーソン)が現れ、「私が三つの物語を語り終えたら、4つ目はお前が話せ。真実を語るのだ。」と囁き、それから怪物は一つずつ物語を語っていくのだったが…。

3年近く前に、最愛の母を癌で亡くし、その半年前には祖父も亡くしてる私にとってこの映画は、当時の今際の際や闘病生活どころか、今現在に至るまでの気持ちを代弁、或いはアンビバレントな複雑な感情に立ちはだかると共に、寄り添い、励まし、背中を押してくれるような、そんな素敵な映画です。
コナーをはじめ、主要な登場人物たちの心情を思うと、心象風景としてダークファンタジー色はもう少し濃いめで暗い方が、よりリアルなのかなとも思いますが、あの怪物がどうして生まれ、何をするために現れたのかと考えると、それは決してネガティブなものではなくポジティブなものだと思うので、これくらいのテイストで逆によかったのかなと思います。

怪物の語る三つの物語と、コナーに語らせる真実の話し、これはどれも違うような話のようでいて、全てコナーの中にあるアンビバレントな感情を表し、現実から目を背けさせないためのもので、これが凄く共感できるんですよ。
子供だろうが大人だろうが、人間そんな単純なものじゃないですよね。二面性もあれば矛盾もありますよ。
都合のいい嘘は信じても、都合の悪い真実からは目を背けたり。
だけど逃れようのない現実と直面することはやはりある。
いつまでも人知れず心に燻る思いもやはりある。
最愛の人に助かって欲しいと思う反面、その時が来てしまうのをただ待ってる不安や苦しみから早く解放されたいという思いも、悲しいけどやはりあるんです。しかもそれは自分自身も認めたくない真実。

コナーが厳しい現実と向き合うだけでもう号泣もんでしたが、ラストシーンで怪物がどこから生まれて、何のために現れたのかが示され、更に号泣。涙腺崩壊。偉大なる母の愛。

興行的に成功とは言い難い映画みたいだけれど、もっと評価されてもいい映画だと思います。

コナーを演じたルイス・マクドゥーガル君が非常にいい演技をしていますというか、役者全員良いですね。
父親役のトビー・ケベルはバルサのジェラール・ピケかな?とか思いましたけど。
映像や演出面も素晴らしいし、イギリスのロックバンド、キーンによるエンディング曲のTear Up This Townの歌詞含め、曲も最高!
凛太朗

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