爆裂BOX

エンドレス・フィアーの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

エンドレス・フィアー(2013年製作の映画)
3.5
薬物所持と育児放棄の疑いで裁判を控えるリンダ。ある夜、彼女は一台の車に連れ去られ、森の奥に置き去りにされてしまう…というストーリー。
マイケル・マドセン出演の、森の奥で監禁された女性の体験する恐怖を描いたシュチエーションスリラー。
森の中で大木にワイヤーで繋がれ、一人置かれていたリンダ。周囲の地面からは複数のパイプが伸びており、そこからは男女の声が。そしてリンダを誘拐した男は彼女に彼らを生かすか殺すかの判断を委ねる、という内容です。
誘拐された女性が森の中で鎖で監禁され、男に色々指示されるという展開は「JIGSAW デッド・オア・アライブ」を彷彿させますが、あんなに冒頭からグロを盛り込んだりはしてません。
序盤は主人公リンダのダメダメな生活が描かれますが、ドラッグづけて子供の面倒も見ずに(近所の子供に面倒見させたりする)恋人の家に押し掛けて追い払われ、違法薬物所持と育児放棄で裁判にかけられて子供取り上げられてもドラッグ辞めずに金策から売春始めたりと本当にどうしようもないクズな姿が描かれます。
売春を行おうと乗り込んだトラックの運転手に拉致されて森の中に連れてこられてワイヤーで監禁されて監禁生活が始まりますが、犯人も如何にもサイコパスな風貌じゃなくて、太っちょの気の良いオッサン風なのも逆に不気味さを感じさせます。言動も神のようで、最初生き延びようと調子合せる主人公の事責め苛む言葉ややり取りは告解みたいな感じがあります。
周囲の地面には男によって誘拐された複数の男女が埋められていて、空気穴として地面からパイプが伸びています。男が言うには彼らは全員犯罪者であり、男が出かけている間にその中から生かす者、殺す者を決めるように言われたリンダがパイプを通して埋められている男女から事情を聴きとろうとする、会話劇が主体のような流れになります。その中の一人のリリーとの会話の中で彼女の子供への思いを聞いて何とか彼女を助けようと励ましたりする所はリンダの変化を微かに感じられて良かったです。
男も言葉で責めた手はしますが、直接的な暴力や拷問を振るうことはないですね。地面に埋めた人を殺す時もパイプ引き抜くだけですし(土が流れ込んで生き埋めに)、リンダが掘り出した女性を射殺するシーンも直接的な場面は無いのでゴア描写は全くと言っていいほどないですね。痛々しいシーンはリンダが釘踏むシーンくらいですね。
リンダがワイヤー切って脱出を図るシーンもありますが、どちらかというとスリラー色よりドラマ色の方が強い内容ですね。リンダの監禁生活と交互に収監中のリンダがマドセン演じる刑事に事件を証言する姿が描かれ、リンダが助かるのは確実ですが、これが現実なのか、それとも刑事が疑うようにジャンキーの戯言なのか?という構造にもなってます。一回逃げだしたリンダが捕まってもまたワイヤーに繋がれるだけで生き埋めにされる事もなくリンダに甘いのも幻覚なのでは?と感じさせます。
結構アッサリ脱出して生還しますが、もう一度子供達と暮らす為、更生の決意を固めたリンダの姿は前半の彼女とは別人に見えます。マドセンから渡されたタバコ吸わずに返す所も良かったですね。
ラストで明かされる真相によって、直接的な殺害シーンがないことやリンダだけ特別待遇だった理由等に納得いきますね。かなり身体張ってるし、逮捕されるリスク高いけどそれも込みで信念持ってやってるんでしょうね。リンダかなりトラウマ背負う事になりそうだけど、もう一度生き直すにはそれくらいの痛み背負う必要があるってことかな。ここら辺は「SAW」のジグソーの信念に通ずるものがありますね。
残忍な拷問蟻のソリッドシュチエーションスリラー期待すると外すかもしれませんが、ラストのオチも捻りあるし、ドラマ面も楽しめた作品でした。