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ワンダーウーマンのEikeのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン(2017年製作の映画)
3.4
新興勢力と言えるマーベルスタジオがけん引するアメコミ映画ですがアメコミの本格的な映画化といえばDCコミックの映画化でワーナーブラザーズの十八番だったはず。
それが1978年の「スーパーマン」であり、1989年の「バットマン」だった訳で共に映画史に名を遺す大ヒットとなりました。

しかし逆にその「実写映画化」の成功があったが故にデジタル化の波に遅れをとった感が無きにしも非ず。
そこで"300"と"Watchmen"という2作のアメコミ作品を圧倒的な精度で「デジタル実写化」した力量を買ってザック・スナイダーにフランチャイズの統括を託したものの、非デジタル部分の演出力の力不足は明らかでした。
また、WBとしては興行面・評価面共に大成功を納めたダークナイト・トリロジーの方法論をマーベル製の諸作に対する差別化の手段として他の作品群にも適用しようとしたわけですが結果として「マン・オブ・スティール」「バットマンVSスーパーマン」といった期待作は妙にシリアスで「辛気臭い」印象に終始してしまいました(個人的感想です)。

その反省を踏まえて原点回帰となったのが本作「ワンダー・ウーマン」。
最初に映画化のアナウンスがあったのは1996年ですからそれでも20年かかった計算になります。
本作の特色でありヒットの最大の理由は本作が久々に本格的なエピック大作のスタイルで作られている点にあると思います。
それこそアメコミの映画化作品では1978年版の「スーパーマン」のテイストを一番ダイレクトに受け継いだ作品だという気がします。
時代設定が第一次世界大戦期である点もエピック作らしい設定と言えます。

考えてみればマーベルスタジオの諸作には本作の様なエピック大作と呼べる印象の作品は皆無な訳で(Avengersを含めてみても)本作の「映画らしさ」こそ現代のアメコミ映画としてはある意味「例外」と言ってもよいかもしれません。
その意味では、まさに由緒ある映画スタジオの作品らしさが感じられ魅力的であります。
端的に言うならデジタル制作の申し子たるアメコミ映画でありながら非常に「映画らしい作品」となっているということであります。
もちろんそれはワンダーウーマンという、映画としてはまだ知名度が高くないヒロインのキャラクタとしての新鮮さと、その役に生命を吹き込んだガル・ガドットの好演があっての事でありましょうが。

お話しそのものは初登場となるヒロイン紹介の為のエピソードに成らざるを得ない訳で他のヒーロー映画と同様で新鮮さに欠ける印象はぬぐえず、その点は後発組としては不利であったのも事実でしょう。
ただ、ロマンスパートと時代背景を反映した性差ネタを必要以上に道具にしなかった点は賢明な判断だと思いました。
女性のスーパーヒロインである点を過剰に強調しなかったのは逆に言えばそれくらいこのワンダーウーマンというキャラクターに強さとアピール力があることでありましょう。
事実、この美しき正義の使者の役割は以降のDC作品において大きなものとなりました。
既に第2弾も公開済みですがコロナ禍の影響も受けてこの第1作ほどのインパクトは得られなかったようで、やはりフランチャイズ展開は容易で無いということなのでしょう。
当然第3弾も準備が進んではいるようですが焦ることなくじっくりと物語を固めた上で作品を届けていただきたいものであります。
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