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火祭りのakrutmのレビュー・感想・評価

火祭り(2006年製作の映画)
4.0
チャハールシャンベ・スーリーと呼ばれる祭りが行われる日(新年の前の最後の水曜日前夜)を舞台に、夫が隣人と不倫しているという疑惑に取り憑かれている妻と夫の夫婦関係を描いた、アスガー・ファルハディ監督のドラマ映画。

前二作の法律をテーマとした内容とは打って変わり、夫婦関係の機微を描いている点は『別離』とかなり似ている。ただし『別離』のようなサスペンス的な要素はないが、一方で夫の不倫をめぐる夫婦の駆け引きがじっくりと描かれている。イランの文化や宗教とはあまり関係ない全世界に共通するテーマとしての夫婦関係なので、万人受けする映画かもしれない。最後のほうで花火や炎で祭りを祝うシーンの混沌とした感じが、夫婦の心情を暗示している。

また、この夫婦の家の家政婦が関わってくる点も『別離』を思い起こさせるが、家政婦の若い女性はあくまでも傍観者である。ただし、この夫婦の関係の変化に決定的な役割を果たすなど、結婚間近でありながら女性らしいしたたかさを持ち合わせているような描き方もしている。この役を演じているのが前作に続いて出演しているタラネ・アリシュスティなのだが、表情や雰囲気が全然違うので、同じ女優だとはなかなかわからなかった。これほど女性だけが映っている時間が長いイラン映画もなかなかないかもしれない。
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