雷電五郎

リリーのすべての雷電五郎のレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.1
原題は「The Danish Girl」でデンマークの女性という意味だそうです。こちらの作品は邦題のが圧倒的に良いですね。

世界初の性別適合手術を受けたある女性の実話を基にした映画です。1920年代当時、トランスジェンダーという言葉もなく、ましてや体と精神の性別が一致しない、という事例を証明するだけの知識はないので、当然アイナーは何件医者を回っても精神疾患という診断を受けます。

少なくとも私自身は体と精神の性別に違和感がないので、いわゆるシスジェンダーなのだと思います。しかし、毎朝目が覚めて、自覚する性別とは肉体が異なり、また、肉体の性別による役割を強いられる苦痛は到底簡単に想像がつくものではありません。
アイナーの妻であり、リリーの親友であるゲルダは妻としてアイナーを愛し、友としてリリーを支えました。リリーのトランスジェンダーとしての苦しみとともに性別や立場を超えるゲルダの深い愛情は人間同士の間には恋愛や親愛といった言葉では括れない愛情の在り方があるのだと感じる作品でもありました。

最期にリリーがゲルダに言った「これほどの愛に私は値しない」のセリフ、でも、ゲルダもアイナー/リリーでなければ、これほどの愛を注ぎはしなかったのだろうと思える2人の深く強い結びつき、涙が出ました。非常に素晴らしい作品でした。
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