雷電五郎

バーバリアンの雷電五郎のレビュー・感想・評価

バーバリアン(2022年製作の映画)
3.6
デトロイトの郊外、宿泊する家がブッキングしてしまったキースとテスはやむなく、その日は同じ家で過ごすことに。しかし、翌日テスがトイレットペーパーを取りに地下室へ行くと謎の隠し部屋を発見する、といったあらすじのホラーです。

キースとテスが過ごす前半部で地下室に何かがいることを示した直後、場面はがらりと変わって性犯罪で告訴されバーバリー通り473のいわくの家へやってくるAJに話が変わります。
キースとテスがいた家はAJの持ち家で二週間は人が利用していない、という不動産屋のセリフ、どうもキースとテスが宿泊予約をしたのは何かしら人為的に家に導かれた感じがしました。

中盤で別の登場人物にバトンが渡されることで終始重苦しい空気が続く訳ではないので、新しい登場人物AJがどうやって前半の話に繋がるのか興味を惹かれる作りが変わっていて面白かったです。
一体どうやって作ったのかカタコンベのような広い地下室や、周囲は半壊した廃墟だらけなのに一件だけ綺麗に保たれた件の家など雰囲気作りが独特で個人的には好きでした。

近親相姦の繰り返しによる遺伝異常のせいか、地下にいた女性の容貌が異様で知能が乏しいながら子供(と見たてた犠牲者)にかける情深さはラストに少々切なさも感じました。

テスを面接した女性が「あそこは駄目」と言っていたことを考えると何かしら地元の人の間では噂になっていたのか、治安の悪さで有名だったのか、15年住んでいたホームレスが知っているということはそれなりに知られた話だったのかもしれません。

バーバリアンとは野蛮人という意味の言葉ですが、バーバリー通りの家に住む何かを指しているとも受け取れ、また、何十年もあの家で女性を嬲り続けていた男のことを指しているともとれました。キースもテスも地下の女性も「バーバリアン」の犠牲者だっと言えますね。

何故自分達がこんな目に遭ったのかという被害者の探索はないのですが、過去の話が挟まることで原因を窺い知れるのも作りがうまいです。直接的な殺害のシーン以外に残酷な描写はありませんが過去から現在まで続けられた男の凶行が最も陰惨で残酷であることが理解できるのがよかったです。残酷な描写だけが伝えるすべではないので。

一風変わった演出や深い地下通路など設定が非常に面白く最後まで楽しく観れました。
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