NHK実写ドラマの映画化ということで恐らく外部の配信には来ないのではないかと思い地上波で観ました。こういうとき、CMのないNHKはありがたいですね。
相変わらずロケーションや衣装などの美術センスが突出していて、いちシーンごとにカットが美しかったです。映画では特にそれが際立っていたように感じました。
話の内容はシンプルながら伏線を綺麗に回収し、沈黙の間をたっぷり取ることで無言にこめられた情感の描写が観ている側の想像を誘います。
ドラマ前後編でも差し支えない内容ではあるんですけど、普段のドラマと同じく無音の間を要所要所に挟んで露伴と奈々瀬の関係性に余人が介在しえない独特のしっとりした雰囲気を持たせていたため怪奇との対峙より、奈々瀬を解放したというハッピーエンドの爽やかさに繋がるのがよかったです。
奇妙に音程の外れたBGMで不安や疑惑を呼び起こすシーンの緊張感を高める少々ホラー的な演出の反面、岸辺露伴をはじめ登場人物の心情の機微が描かれる場面では大半がBGMを排しており、画から迫る情感で想像させる手腕がまさに映画といった具合で好きですね。
怪奇に見舞われそれを回避するというドラマの定番ルートとは違い、ミステリーの要素も含みつつ怪奇そのものを救うという奈々瀬と出会った夏のように涼やかな展開が余韻あってよかったです。絵という点も最終的に露伴に行き着いていて過去と現在の繋がり、その繋がりによって生じる後悔の継承のような人の業を感じさせました。
高橋一生さんの岸辺露伴はマストにしてベストだと感じます。
ドラマの新作も楽しみに待ちたいと思います。
