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リリーのすべてのぷーのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.4
今でこそ、LGBTについての知識や認識、考えが広まってきているが、そういった思考が異常者だとされる時代で、自分の体と心の性別が違うと気づいたアイナーの孤独感、不安は計り知れない。

命を失うリスクを負ってでも女性になる手術を受けたリリー。2回目の手術のあとには、母親がリリーと呼んでくれることを、幸せであると話した。リリーにとって、女性になってああしたいこうしたいということが大事なのではなく、「女性になること」それこそがリリーのすべてなのだと思った。

リリーの故郷の丘で、
飛んでいくスカーフを見ながら、「自由にしてあげて」というゲルダからは、
妻として夫を失った悲しみの顔だけではなく、アイナーを愛する一人の人間として、やっと自由になれたね、という安堵のようなものが感じられた。

また、映像のどこを切り取ってもとても美しくまるで絵葉書のようだった。
エディ・レッドメイン演じるリリーも、表情や仕草など、全てが女性そのものであり、引き込まれるような美しさがあった。

(1930)


2回目鑑賞 01/24/2020

1回目の鑑賞では分からなかった、繊細な主人公たちの感情の変化を読み取ることができた。

リリーが初めて手術を受けに行くため汽車に乗る場面、アイナーとしてゲルダにキスをする最後だった、しかし、ゲルダの表情はどこか微笑んでいて、愛するアイナーが1歩ずつ希望を持ちはじめていることに対する喜びがあるように思った。これは、夫婦の愛でもなく友人同士の愛でもなく、2人の"人間"の愛であった。

2度目の手術をする前日の夜、 病室で1人いたリリーが涙する場面では、
その表情から、やっと女性になれるという喜び、今まで経験したきた辛い過去、アイナーとして妻のゲルダに対しての申し訳ない気持ち、それでもやはり本来の自分の姿になれるという希望に満ちた気持ち、など、複雑な心情が感じ取れた。

映像や、風景、音楽、登場人物の表情、言葉、全てにおいて、美しい、という言葉がぴったりの映画だと思った。
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