くじら

リリーのすべてのくじらのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

Blu-rayレンタルで鑑賞。映像特典のメイキングあり。
 エディ・レットメインの、アイナーから内に秘められていた女性リリーへと変わっていく演技が圧巻。リリーとアイナーの妻ゲルダの愛がすごい。

あらすじ
 1930年代に実際に世界で初めて性転換手術を受けたリリーと、彼女を支えたアイナーの妻ゲルダの愛を描いた作品。身体的性別と異なる性的自認や性的嗜好という考え方が異端で病気だと考えられていた時代。舞台は厳格なデンマーク🇩🇰。
 人付き合いが苦手な風景画家のアイナーは思いつきで女性の格好をしリリーとして妻と芸術家パーティーに参加することに。この事からアイナーの中にいた女性としての人格がリリーとして形を持つように。しかしその考えは受け入れられるものではなく、放射線治療を受けさせられるが、治らない。
 そのリリーを妻が描いた作品が評価されパリへ移る。妻としてアイナーを必要とするゲルダと、リリーとして生きアイナーを殺してしまいたいリリーの気持ちがぶつかり合う。アイナーは何度も病院に行くが、当時の強引で危険な治療や精神分裂など危険な病気と診断される。
 そんな中、ゲルダが紹介された医師に、リリーの性自認が間違っていないと、身体の方を治す手術を提案され手術を受けることにしたリリー。そんなリリーを支えるゲルダ。最後に2度目の手術に耐えきれずリリーは亡くなってしまう。

 感想
 リリーが徐々に女性として所作や服装、化粧が洗練されていく演技や表現がいい。特に男性の服装に違和感を感じて今で言うユニセックスの服装を着て歩いている姿がもうこの人はリリーでアイナーにはなれないことを感じさせる。
 ゲルダが共に過ごしてきたのはアイナーでリリーではないし、夫をアイナーを求めているけど、リリーはアイナーに戻れないというすれ違いが辛い。特に1度目の手術後、百貨店で働くリリーにゲルダが絵を描いたら?という言葉が悲しい。
 百貨店で楽しそうに働くリリーが素敵。もっと女の子として楽しく過ごしているリリーが見たかった。
 あの時代では心や脳の病気とされていた身体的性別と異なる性自認について、リリーが、間違っているのは身体の方だという結論に至ったのがすごい。それを受け入れて支えたゲルダの愛もすごい。

 余談だけど、性自認と性的嗜好が分けて扱われているのが印象的。パーティーで知り合った男性と関係を持ちそうになった時、リリーがアイナーと呼ばれて出て行く描写はリリーは女性だと扱って欲しくて、男性の方はリリーではなくアイナーを欲してるといった感じで。手術後に再会した時に彼がゲイだからただの友達と言ったリリーの言葉が目からウロコだった。
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