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ある天文学者の恋文のevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

ある天文学者の恋文(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【恋の終活】

教授Edと教え子Amyの不倫の末路…、とはいえ別にドロドロはしていません。

Edにとっては文字通り人生最後で最高の恋の相手として、若くて美貌のAmyに一目惚れしたのでしょう。なぜAmyほどの美しい女性が高齢の彼を選ぶのか、予告編を観た時から疑問でしたが、その心理は彼女の過去にヒントがあるようでした。加えて、自分が目指す分野で何歩も先を行く男性は、探究心を満たしてくれる魅力的な存在に映るのでしょう。

最期の数ヶ月を共に過ごす機会を与えられれば、残される者達は、心の準備と共に、何かをしてあげたり、感謝を伝えたりという充足感の獲得や罪滅ぼしができます。そんな配慮が微塵もないEdのとった行動は、担当医の言う通り身勝手とも呼べるでしょう。ただ、元気な時の姿のままで皆の記憶に残りたいという、死を前にした時の気持ちも理解できなくはありません。そこでEdは、パラレルワールドであたかも生きているような、この世界では「無」でも愛は存在し続けていて、一方通行の遠距離恋愛に似たシステムをAmyに遺そうとしたようです。

死別でも失恋でも、愛する人を人生から失えば、嫌という程悲嘆に暮れる筈です。思い出として振り返れるようになるまでには時間がかかります。例えば "P.S. I Love You" では、夫の死後、頼りない妻を励まし、新しい恋と自立の道へ導くような仕掛けでした。Edのやり方は、Amyが現実を受け止めるのを先延ばしにするようで、連絡を停止する手段はあるにしても、遺したメッセージ全てに目を通したくなるのは当たり前ですし、死んでもなお彼女を引き留めてしまっているように見えました。あの愛の巣を相続させるのも…、思い出に浸るには良いとしても、決して忘れられないですよね。

ただ、リアルタイムでは相手に届かない録画メッセージを通して、両者が自分自身を客観的に見つめ直し、人生に区切りをつけるのに必要な時間となったようでした。

Doubleという言葉が何度も出て来ます。
Amyがこなすスタント、代役、替え玉という意味もありますし、Edの言う(パラレルワールドに存在する)別の自分(生き写し、そっくりさん)という意味もあります。ここは上手くかけているのだと思います。

星の輝きが瞳に届く瞬間、星は爆発して消滅しているのかも知れない、しかし星は確実に存在していたし、その光も本物である。実体がなくなっても愛は心に届くのだ、と天文学と恋愛を重ねていました。

一番下の男の子はてっきり孫だと勘違いしていましたが、8歳前後?の息子でした。不倫関係が6年間ということは、息子が産まれてまもなくEdは不倫に走った訳ですね(~_~;) 。最後にもう一度若くて綺麗なお姉さんと恋愛したいと願う、おじ様達の儚いロマンという見方を否定すべきなら、もう少し若く見える俳優さんをEdにすべきだったかな…。

前回残り僅かのクライマックスで映画館が停電となり、今回再挑戦でほぼ2回観た気分です。
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