ダメハム

ふたつの名前を持つ少年のダメハムのレビュー・感想・評価

ふたつの名前を持つ少年(2013年製作の映画)
4.3
2013年のペペ・ダンカート監督作品。ポーランドを舞台にユダヤ人迫害から1人で逃げ延びる8歳の少年を描いた衝撃の実話を基にした話。

107分とは到底思えない濃密さに胸が締め付けられる。自然描写の美しさに反比例して人間の卑劣さがこれでもかと際立つ。序盤から大切なものをどんどん喪失していく様はかわいそ過ぎて見るに堪えない。でも、そこに人間の良心が、混沌の時代の中でも確かに生き継いでいてバトンタッチされていくのが美しくもある。

ポーランド人とユダヤ人の違い。ユダヤ人とは何なのか。誰にも語ってはいけない内に秘めたアイデンティティーを守ったものが明かされるシーンに感動。
当時、ポーランドに300万人いたユダヤ人が戦後には5万人しか生き残れなかったことを考えると、これ以上に想像するに余りある非人道性がまかり通っていたのだと思うと何も言えない。

そして主人公の少年を双子が二人一役で演じていたことに驚いたね。全く気付かなかった。本人たちは正反対の性格で、それぞれ勝気と内気らしいのだが、それが強気と繊細さを併せ持つ少年を演じる上で主人公のキャラクターの幅が広がったそうだ。

正直あのラストはちょっと蛇足に感じたけど、とても見る価値のある映画でした。
ダメハム

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