【『オデュッセイア』とゴダール】
※『イメージの本』公開記念!ブログより転載
本作はストーリーの基礎と呼ばれているホロメスの「オデュッセウス」を多層構造で描いた作品だ。「オデュッセイア」はあるきっかけで地獄の淵に追い込まれた男オデュセウスが命がけで生還するカタルシスを描いた作品だ。本作は、フリッツ・ラングが「オデュッセイア」を映画化する様子をベースにした映画だ。
ゴダールお得意の引用も健在冒頭から、カイエ・ドゥ・シネマの名評論家アンドレ・バザンの「映画とは欲望を映し出したもの」という発言を冒頭に持ってくる。
「オデュッセイア」という口承文学をいかにして映像化しようとするのかというシーンと主人公が恋愛において窮地に陥る様子に「オデュッセイア」性を反映させていく様子をかませていく。
そしてセクシー女優ブリジット・バルドーの彫刻さながらの肉体を前面に映し出すことで冒頭の引用を回収する非常に高度な脚本を展開している。それでもって、ラスト。「オデュッセウス」ものという定石を外す。
ゴダールの作品群の中でトップクラスなまでに、洗練された無駄のない映画となっている。
ゴダールは常に、「映画とは何か?」を徹底的に批判し、映像化してきたのだが本作ほど、キレッきれな作品にブンブンは感動を覚えたのであった。