Hiromasa

小原庄助さんのHiromasaのレビュー・感想・評価

小原庄助さん(1949年製作の映画)
4.5
小原庄助さんがお金もないくせにこんなに気前がいいのは、村の人たちとの関係と長年の習慣によるのであって、しかしだからと言って彼が人々を愛していることに変わりはない。というか、愛もまた他者と歴史に規定された身振りであることがこの映画では描かれている。そしてそんな小原庄助さんが最後、泥棒を投げ飛ばす。これを見ると小原庄助さんは実は「最強の男」なのではないかと一瞬思ってしまうが、それは単に彼が柔道が得意だったというだけのことであって、無一文で街道を歩いていく小原庄助さんはヒーローでもなんでもないただの人である。だからこそ妻が彼のあとをついて来ることがひとつの奇跡として感動的に見える。序盤、妻に「あなたってどういう人なんでしょうね」と言われ、「どういう人って、こう、これだけのもんさ」と言う夫。この「こう…」という微かな言い間違いが帯びるユーモアが映画の全篇を覆っている。
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