MasaichiYaguchi

人生の約束のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

人生の約束(2016年製作の映画)
3.3
人は失ってみて初めて気付くことがある。
本作の主人公、IT企業のCEOで脇目も振らずがむしゃらに事業拡大してきた中原祐馬も元共同経営者で親友の塩谷航平の異変に始まる人生の変転で自分を見詰め直し、本当に大切なものに気付いていく。
「池中玄太80キロ」、「新宿鮫」、「点と線」等のテレビドラマを手掛けた石橋冠さんの初めての劇場映画は、海に面した美しい富山県新湊を舞台に、主演の竹野内豊さんをはじめとして、江口洋介さん、松坂桃李さん、優香さん、西田敏行さん、柄本明さん、小池栄子さん、ビートたけしさんという錚々たるキャストで心の襞に染みるようなドラマを紡いでいく。
本作では“繋がる”という言葉が何度も出て来る。
twitter、Facebook、LINE等のSNSで何時でも何処でも世界の不特定多数の人々と瞬時に“繋がる”ことの出来る現代。
だけどその“繋がり”はバーチャル・リアリティにおける関係みたいで脆弱のように思える。
親友の郷里で開催される江戸時代から約350年続く「新湊曳山祭り」を契機に、主人公をはじめとした人々がわだかまりや確執を越えて“繋がる”姿に胸が熱くなる。
本作の題材となった「新湊曳山祭り」はニュースでしか見たことがなかったが、勇壮に曳山が躍動するのは曳く人々の心が一つになって初めて成り立つことを改めて理解した。
土地やそこに住む人々と“繋がる”ということは、連綿と受け継がれてきた文化や歴史、そこの人情に“繋がる”ことだと思う。
仕事人間であった主人公が“繋がる”ことによって失ってしまったものや大切なものに気付き、新たな一歩を踏み出す姿に心癒されます。