【愛より血】
IFFJ2015にて。
肝となる『ワイルド・アット・ハート』的バカップル愛の暴走劇は面白いのですが、そこを権力が汚し出すと流れがおかしくなり、ラームとリーラの心は沈黙してしまう。以降はよくわからない話になりました。
人物全般、特に脇役の心情や行動原理が二の次にされている気がする。
画づくり…眼は最後まで楽しめましたが。舞台はグジャラートだそうですが、その文化…民族衣装やダンスは興味深いし、中途までは、人間一番強いのは性欲だね、というまとめになっていて(笑)楽しくわかり易かった。時に挟まれるアイロニカルな笑いも効いているし。
しかし中盤、ラームそしてリーラに余計な力を与えたら、肝心な所で物語的に巧く使いこなせず憤死、という印象です。最後の究極の決断に蛇足感。アイロニーが裏目に出たか、あのラストではグリーナウェイ『ZOO』のような後味になってしまった。
本作、サウスの感覚…その庶民感覚をあえて入れているらしいですね。ラームの持ち上げ方や、厚かましさなんてラジニカーントみたい。この砕けた親しみ易さは魅力なのに、お話の組み立てが砕けたらダメでしょう。人物の、心の向かい先がみんなバラバラなんですよ。
しかし、ディーピカーちゃんの演技はよかった。だんだん昏さが出てきたような気がして心配なのですが、ここでは逆に、それが生きていた。
リーラを月に例えていたが巧いと思う。彼女の魅力って、本質的に太陽がないと輝かないのでは?
同じロミジュリネタなら、日本では昨年公開された南インド映画『あなたがいてこそ』の方がずっと楽しく、巧くまとめられていたと思いました。
<2015.10.13記>