えんさん

五つ星ツーリスト THE MOVIE 究極の京都旅、ご案内します!!のえんさんのレビュー・感想・評価

2.0
京都の旅行会社を舞台に、ハミダシ者社員が押し込まれた”中央管理センター”の人間たちが、最高の京都旅をプロデュースしていく同名ドラマの映画版。もともとは深夜ドラマの枠で放映されていたもので、ドラマの定番ストーリーの流れとしては、クレーマーやワケありの旅行客がいる京都ツアーを山本裕典演じる新人ツーリストの佐竹一郎が上司から無理やり押し付けられ、アタフタしている中で元カリスマツーリストで、今や”中央管理センター”という窓際に追い込まれている、渡辺直美演じる高瀬京香が腕を振るって助けていくという構成が一般的なドラマになっていました。今回はドラマの大ヒットを受け、映画版として展開しているわけですが、佐竹はドラマ版の最後で結局”中央管理センター”異動となる毎日の中で、新進気鋭のアメリカ人ドキュメンタリー監督の取材を受けるといった中身になっています。

僕が本作が好きなのは、やっぱり京都が舞台ということ。学生の頃から、いろんな街に住んできましたが、いつも京都が一番と感じるのは、やはり街中の至るところで日本の文化を感じるところでしょうか。それは何しも社(やしろ)や寺院といった宗教を中心としたものだけではなく、例えば、映画や音楽、喫茶店やカフェなどの現代文化を通じても、古くは1200年前の平安の世から江戸、幕末・明治維新から現代まで全ての文化が街中で形となって現れている。学生のときに住んだ金沢でも、それは同じなのですが、文化密度が圧倒的に違うし、東京や大阪などの都市圏に比べると、やはり古(いにしえ)から受け継がれた伝統美というものが備わっている(東京は近現代から発展した都として、多少同じような空気も感じますが)。ここが今でも多くの観光客を惹きつける、京都ならではの魅力だと思います。

ドラマ版ではお話そのものも面白いのですが、併せて京都の魅力というのが、本当に観光をしているような形で紹介されるのが何よりも楽しみでした。京都に住んでいた頃(といっても、最近もちょくちょく行っていますが)の思い出や、街の空気感みたいなものも含め、画面から伝わってくるのが本当に楽しい。ですが、本映画版は上記したドキュメンタリー監督が撮っている、ドキュメンタリー映画の絵が本編の映像となっているので、ドラマのように単純に楽しむには不釣り合いな作風になっていると感じます。お話自体も安っぽいのは元が深夜ドラマだから仕方がないとしても、もっと映画版ならではの味わいというのを感じたいのが正直なところ。これからドラマの最終回の盛り上がりのほうが圧倒的に上だっただけに、本作の出来はファンとしても残念なところです。