えくそしす島

ヒメアノ〜ルのえくそしす島のレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
3.7
【サイコパス(精神病質者)】

常軌を逸したサイコの“森田くん“を描いたR15指定作品。類似作が多い題材の中にあって、今作で描かれているのは

“笑い(日常)と狂気(非日常)"

一見すると相反する要素。それを同じ作品内で地続きに表現し、強烈に突き付けてくる漫画家がいる。それが

原作:古谷 実
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔

あらすじ
平凡な毎日に焦りを感じている清掃員の岡田は、同僚の安藤から想いを寄せるユカに近づくため協力する事に。そんな中、ユカが働くカフェで再会したのは不気味な雰囲気を漂わす“同級生の森田正一"だった…。

「古谷 実」が描き出すのは、シュールな笑いや歪んだ人間の暗部と狂気的なバイオレンス描写。日常が一変するその作風と振り幅はハッキリと好き嫌いが分かれる。ハイ、私は昔から大好きです。

しかし、今作の評価は漫画原作とは大きく異なる点を受け入れられるかどうかで変わる。それは、主役とも言える森田くんの人格形成の描き方について。

“原作"では先天的サイコパス(生まれながら)
“映画“では後天的サイコパス(環境等の要因)

元々、殆どが先天性と言われているサイコパスに於いて、映画では後天性の環境要因とした病質やソシオパス等々、複合的な人物像にされてしまった。

自身では止められなくなった森田くんの中に見える重苦。それは両作とも表現されているが、"自身が悟る“のと"他者が原因“とでは、その意味合いが大きく変わってしまっている。

“映画“は、三者三様(岡田、安藤、森田)に思えて、その実、歯車一つでお互いが入れ替わっていたかもしれないと思わせられる陽と陰、起きるべくして起きた事件、なるべくしてなった人間性とその経緯をハッキリと見せてくれる。

その分、原作にあった現実味を削いだが為に、良くも悪くも映画的になってしまったのは否めない。そんな中、今作の質を1人で底上げしたのが

「森田剛の演技」

息を吐くかのような嘘の吐き方、全てに絶望したかのような眼差し、壊れた人間の狂気、壊された人間の悲しさ。それを見るだけでも充分価値がある。

1997年、日本を震撼させた「神戸連続児童殺傷事件(頭部を切断し学校の正門に晒した)」。その加害者である「酒鬼薔薇聖斗」は、この原作を読んで“涙を流した“と自らが語っている。

一点の擁護も共感も出来ないのは当然として、彼が何に涙し、森田くんの何処に自分を重ねたのか。今は「サイコパス」や「無敵の人」といった言葉が簡単に使われ、一人歩きしている節がある。

そんな世にあって、実際の猟奇事件を起こした人間にまで届く心理描写。映画が気に入った方は原作も見てみると、また一つ、感じ方が変わるかも知れない。

聞き慣れないこのタイトルは、“捕食される“小型のトカゲを指す。何かのきっかけ一つで逆転する「餌となる者」。

ホント、世の中は不平等