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ヒメアノ〜ルのsomaddesignのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
5.0
見届け後の精神的ダメージは原作・古谷実作品群そのまま。
底辺の諦観溢れるクライムスリラー。


原作は1巻だけ読んで「なんだまた非モテが美少女に岡惚れされて、奇妙な隣人にバイオレンスに巻き込まれる話でしょ」ってほっぽらかしてたら………
見終わってしばらくダメージから回復できず、ずっと森田のことを考えてしまいました。
森田演じる森田剛の一切の生気を失った目がすごい。狂気すら宿ってなくて、ただの虚みたく黒々と白目の真ん中にあるだけの目が怖い!疲れた肌感とか痛んだ茶髪、タバコを注意されて逆ギレ気味に消すのにDQNじゃないから、オラつくわけでない。
まともに話が通じなそうで、息するように嘘をつくヤバヤバしさ。「ノーカントリー」のシガーみたく独自の美学があるわけじゃなく、ただ思うままに殺してく。心と人生が完全に壊れてるのに人間臭さが残ってる……なんちゅー、複雑で魅力的な悪役なことか。

前半と後半、過去と今、愛情と友情、生と死、幸と不幸、白と黒、強者と弱者、捕食する者される者……ことほど左様に、映画の作りも、物語的にもカット割も、対関係のコントラストを主軸に見せる作り。なにが両者を分けてしまったのか、その差はほんの紙一重かもしれなくて、なんでそうなっちゃったのか考えさせられます。

森田剛の役作りの見事さはモチロン、なんちゅーかイイ顔が揃ってて素晴らしい! あの毒キノコみたいな女友達アイちゃんの顔とか原作から抜け出てきたみたいだし、駒木根隆介演じる和草くんと婚約者の顔!笑ってイイのか同情すべきか迷うレベルの高いイイ顔! キャスティングの見事さも特筆モノでした。

ムロツヨシの安藤さんはコメディリリーフでありながら、森田と同じく狂気の人で、それでいて森田と対になるような人で、彼らを分けたのは何だったのか悩みます。綺麗ごとでも底辺の人生に希望を見出そうとしたり、過去を過去として今の繋がりを大切にしようとしたからかなあ…安藤さん幸せになってほしいなあ……
ボーイズビー安藤さん

今年の劇場鑑賞、55本目
今年見た邦画で一番ショッキング
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