ピースマイル

ヒメアノ〜ルのピースマイルのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
4.4
邦画史に残る、残すべき傑作。
可能ならば海外の人にもたくさん観て欲しいのだが難しいだろうか・・・。本当
に面白いのだが。

評価すべき点は主に3点。
一つは、暴力の描写から逃げなかったこと。
人を鈍器で殴るシーンも刺すシーンも銃殺するシーンもちゃんと描いている。そ
してレイプシーンすらも。
そうでないとこの映画特有の不穏さは伝わらない。
ジャニーズタレントにここまでさせた監督も事務所も素晴らしい。

二点目は、オープニングタイトル。
そもそもタイトルは「今から映画が始まりますよ」という宣言であるわけだが、この映画においてのその宣言の仕方があまりにも残酷で完璧すぎる。
おそらくだけど、今まで観てきたタイトルシーンの中での最高のものだった。
もちろん、反則技のような手法であるため二度と使えるわけではないのだが、これを観ることが出来ただけで感謝。
あの瞬間のテンションの上がり方(実際にはこれから起こる残虐な事件への幕開けなので恐ろしいのだが)はハンパない。
最高。

三点目は、言うまでもなく森田剛という俳優。
先述の通りのジャニタレでありながらここまでの「クズ」を演じた俳優はいただろうか。
設定上のクズなら他にもいたかも知れないが、ここでの森田剛は画面全体からすべて「本物」としてのクズなのだ。
大変失礼だが、森田本人がそのような人殺しであって、そのドキュメンタリーを観ていると完全に錯覚するレベル。
本当に素晴らしいキャラクターを作り上げたと思う。

あくまでもここからは小さな不満に過ぎないのだが、さすがに脚本上で見逃せない点がいくつかあった。

まず、最終的に森田に殺害されるカップル。あまりにも無計画すぎ。
そこまで無計画だとさすがに冷めてしまう。
そして警察が無能すぎ。
真っ先に守る必要のある市民を野放しにするなどまず考えにくい。
もう少し理屈の通る脚本にするべきだった。
それと、キャラクターのリアリティラインの設定。
濱田岳や森田剛の演技力がズバ抜けていたため、そのほかの「マンガキャラクター」達がやはり浮いていた。
マンガ原作と知っている身としては納得いくのだが、そうでなければノイズになってしまう。
マンガ設定をバッサリ捨ててもいいので、映画に合わせた演出をすべきだった。

とはいえ、この映画を最高だと思う気持ちは変わらない。
絶対に観ておくべき一本。