ピースマイル

ウィッシュのピースマイルのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
3.5
ディズニー100周年にふさわしい作品、とは思う。観る価値はあるかといえばあるし、子どもにも自信もって薦められる。
が、将来ディズニークラシックになるような作品とは思えないかな。

作品のメッセージは分かる。100年前の白雪姫やシンデレラが他人に幸せにしてもらう立ち位置だったのに対し、アーシャは「夢は自分で叶える!」と高らかに歌う。
今作ではいわゆる恋愛相手はいないし、なんなら王子様はヴィランだ。
多様な人種が暮らす国で、男性とか女性という言葉すら存在しないような平等な世界を描こうとしたのだと思う。
それはいい。全くもって素晴らしい。
が、それで映画が面白いかというとそんなことはない。

シンプルに言えばドラマが何もない。
起承転結の「起承」までが冒頭15分で、そこから全く「転」になることなく「結」がくる。
その「結」の部分も冒頭15分でアーシャが説明しちゃうので、あとはそれをアーシャが達成するまでじーっと観るだけになる。
アナと雪の女王では途中でハンス王子がヴィランと判明するなど転換があるのだが、そういうのが一度もないのはなかなかツラい。
はっきり言うと退屈だ。

そして一番の問題点は、アーシャという主人公のキャラクターの弱さだと思う。
アーシャは最初から最後まで一度も迷ったり悩んだりしない。
ずっといい人で優しいし心も強いので、全く成長することがない。
ズートピアのジュディやライオンキングのシンバのように「このままじゃいけない!」とか「私が間違えてた」とかそういう葛藤がなんにもないのだ。
そして美女と野獣のベルやラプンツェルのように「誰かの心を動かす」という役割でもない。
映画を通じてほとんど誰も成長や変化をしないのだ。
一応王妃が変化する立ち位置だけど、それも「今更何言ってんだ?」としか思えないし。

それと、今までのディズニー作品のオマージュを散りばめるのは品が良いとは思えないがとりあえずいいとして、アーシャが最後に「なろうとする者」に関してはちょっと納得いかない。
該当の映画を観てないと意味分からないし、意味が分かったところで「アーシャは最終的にあんな話の通じない奴になるのか、、、?」と別の違和感が生まれる。
お客様へのサービスというより、必要のないお土産を渡されて困惑させてるだけな気がする。

とまぁ、かなりけちょんけちょんなレビューだけどそれでも良い点はある。
歌だ。
とにかく歌はいい。
個人の好みだけど、アーシャの歌声はディズニープリンセス随一の素晴らしさだと思った。あれを大画面で大音量で聴けるだけでとりあえずオーケーだ。
日本語吹替は観てないけど、CM見る限りはなかなか良いのではないだろうか。