8さん

二ツ星の料理人の8さんのレビュー・感想・評価

二ツ星の料理人(2015年製作の映画)
3.8
人生につまづいた二ツ星シェフが、復活をかけてミシュランの三ツ星に挑む美食エンターテイメント作品。

シェフとしては最高だが、人間的には欠点だらけの二ツ星の料理人アダム・ジョーンズは、問題を起こしてパリから逃げ出す。死んだと噂されて3年、復活をかけたアダムは、かつてのオーナーの息子トニーがロンドンに開くフレンチレストランを訪ね、強引にシェフの座に就く。

「三ツ星をとって世界一になる」と誓い、パリ時代の同僚ミシェルやヘッドハンティングした女性シェフのエレーヌら才能溢れるスタッフを集めるが、初日からやりたい放題で開店早々店を危機に立たせてしまう…


『本当の最高は、ひとりじゃできない。』


料理のプロはスペシャリストであり、厨房の鬼である。調理器具を愛し食材に敬意を払う。しかし、そんな誰もが憧れる料理人にも欠点があった。それは…

まるで戦場の様な喧噪の中で飛び交う罵声と、調理器具によって姿を変えていく食材。その反面、エレガントでスマートなレストラン風景。有名画家が描いた絵画の様に1枚の更に盛り付けられていく色とりどり食材達。華やかな裏にある過酷な現場の対比が、上手く表現されています。

しかし、作っている人の全てが反映されてしまう料理の世界で、今のアダムが手掛ける料理は人気店の更に上をいく地位までは達していない。チームではなくたった1人で作る料理では…

厨房内から覗くブラッドリー・クーパーの魅せる多様な表情は、人間臭く傲慢だ。しかし、人生の汚点をしっかりと咀嚼し、滲み出た絶妙なスパイスを築き上げてきたチームワークによって、より確固たるものとしていく様を味わうコース料理作品である。
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