久しぶりの日本映画、
ザ・昭和映画かと思ってたら、2000年作
わずか22年前なのに、時の流れを強く匂わさせる。
黒木和雄監督、
「祭りの準備」や「龍馬暗殺」など初期の
代表作と
本作の後撮られた戦争レクイエム三部作
本作は、少なくともこれらの代表作と比較するととても特異な一作だと言える。
平成真っ只中でありながら、昭和を色濃く引きずっている登場人物たち。
彼らは、もはや行き場を失い、ゴールを完全に見失っている。
四畳半フォークソングが流行った昭和40.50年代は、彷徨うこと、漂うこと自体が文化として認められていたが、
そんな昭和は既にない。
かつては、行き場を失っても、なんとか社会との繋がりへの模索や期待みたいなものが見えていたけれど、
もはやそれさえない時代と個人、、
原田芳雄演じる主人公のスリは、アル中、
彼を見ていると、スリということ、アル中であることを自身どう受け止め、どうしたいかが全く伝わってこない。
同じことは、スリを追う刑事の石橋蓮司にも、
断酒会の風吹ジュンにも言える。
彼らがどこに向かっているのかが、全く分からない。
これを観客が理解し、評価することは難しい。
ただ、上記の3人の役者さんの演技力で
この作品は辛うじて成り立っている気がする。
あえて、そこを狙って、黒木和雄さんは
一本にまとめたのだろう。
原田芳雄の存在感、いや、漂い感人全てを預けてだんだろう。
監督がこの後、後期代表作である
戦争レクイエム三部作に一気に畳み掛ける前になぜ、これを取りたかったのかが知りたいと思う。
嫌いではないけど、普通の評価が難しい映画です。