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AMY エイミーのJIZEのレビュー・感想・評価

AMY エイミー(2015年製作の映画)
3.7
27歳の若さで急逝し"孤高の歌姫"と称された歌手エイミー・ワインハウスの生涯を元に貴重なプライベート映像や彼女が歌うソウルフルな歌詞の内容を通じ隠された素顔を導き出すアカデミー賞物の長編ドキュメンタリ映画‼全編ビデオ映像やスマホ動画など場面を繋ぎ合わせる"構成の一貫性(ライヴ感)"を賞賛‼(世間の日の目を浴び始めた頃から)社会に対する反発心みたいなもの(不満)が(彼女には)あったんでしょうね。特に(目を覆う程の)フラッシュ(閃光)を彼女に浴びせ執拗に追い回しては情報錯綜を煽るマスコミやパパラッチ全般の存在(確執)には。まず開幕,14歳エイミーの誕生日を皆が満面の笑みで祝う場面は終盤の暗闇に堕ちていく部分(負の素顔)とアンチテーゼを為し印象的で貴重だった。幼少期からエイミーは生身(純粋)な姿(姿勢)で音楽と向き合い麻薬やアルコール依存症に溺れながらも先鋭的な目線で仕事に熱烈な精神を注ぎ込む。彼女の底知れぬ貪欲さが彼女をスターダム街道に押し上げたんだと感じた。単純にいち人間として手を入れる部分or手を抜く部分の使い分けが器用すぎて驚かされる。要するに飽くなき執念or揺るがぬ信念の表舞台では決して魅せない徹底ぶりでしょうか。同時に内面的なモチベーションの温存させ方が真面目な彼女を狂わせたんだとも結果取れましたが…。恋人に対する(無慈悲な)愛の捧げかたとかもスゴいんですけどね。レディ・ガガ等名だたるミュージシャンが絶賛したのも納得いきます。何より衰弱しきったプライベートの素性と野心的な仕事意欲での均衡の取り方がスゴい。

→作品概要。
監督はドキュメンタリ映画の『アイルトン・セナ 音速の彼方へ(2010年)』で知られるアシフ・カパディア。また本作は第88回アカデミー賞やグラミー賞をはじめ各国で40以上の賞を受賞し絶賛されました。

→楽曲と人生がリンクし続ける。
まず私自身,今回(劇場で)ドキュメンタリ映画の鑑賞は初,でした。内容もずばりインタビュー映像や歴史の経緯(エイミーの生涯)を事務的に辿る,というよりかは劇映画同様の重厚な人間ドラマを観てる感覚でした。つまり構成の取り方(当時の映像のみで一貫)が見事なんだと思う。物語の進ませ方もエイミー自身が作詞作曲を手掛けた2007年に大ヒット曲である「Rehab」や同年の「Back to Black」など数々の有名曲を引き合いに彼女の通過点(ルーツ)を巡るかのようなぜ現在に至ったのか核心部(暗闇)にズバズバ迫っていく。中でも前者の「Rehab」は主に"麻薬中毒の治療"を指していてそれに反抗する歌(歌詞の内容)なんだが日本では確実に放送禁止だろうなと感じましたね笑。後者の「Back to Black」でも「旦那が不倫して他の女に走った。だから私は再び暗闇(麻薬中毒)に戻るわ」という感じの内容で歌詞の一部にdickという"陰茎"を指す用語など露骨に登場したり浮気症(or自傷症)の破天荒な彼氏をそこまで長年愛し通すエイミーには(色んな意味で)考えさせられました。不幸(重荷)を背負うほど素晴らしい芸術を彼女は淡々と(それを楽曲に込め)完成させていくんでね。そういう風に彼女の(刺激的な)実生活から経た出来心と(哀感ある)楽曲(歌詞)とが交錯し続ける。

→総評(様々な憶測を飛ばした彼女の死因)。
エイミーの"蜂の巣(=Beehive)"と称される大きな巻き上げヘアと目尻に跳ね上がるよう引かれた極太アイラインの独特な雰囲気を感じさせる歌唱スタイルも印象的でした。麻薬中毒やアルコール依存症,ディプレッション(鬱傾向)など1度暗闇に手を染めた彼女に戻る術はなかったんだろうなと中盤辺りから感じました。特に有名曲「Rehab」が空前の大ヒットを飛ばし同時に生身の理性や感覚がエイミーの元から徐々に幻覚的に薄れ去ってく過程は観ていて非常に辛く息苦しかった。昨今の伝記映画でもよく(感想で)述べてますが,どれ程その道に長けた天才でも殻に閉じ籠ってては駄目なんだなと。固執せず身近に心より添える人間や異変を直ぐ様察知できるような人間と関係性を共にする事は必要なんだと感じます。それがエイミー自身の場合は破天荒な浮気症の彼氏であり,その彼氏(ダメ男)の影響(交際経験)で最高の楽曲が完成したんだと読み取れば実に皮肉なもんです。最後にアルバム「Back to Black」に収録されてる楽曲で「Love Is A Losing Game」という切な系バラード曲があり要するに「相手により想いを乗せ恋した方が負け」という所謂,"恋は負け戦"という歌詞の内容で,そういう彼女自身の実生活に絡めた価値観が年々赤裸々に比例して歌詞に込められ暗闇に堕ちてく変化の在り方にも注目(見所)なのかと感じました。自虐的でもあり前向きにも受け取れる歌詞。最後に本編クライマックスでも(歴史の経緯を辿れば歴然なため言及するが)エイミー宅に警察or救急車が押し寄せそれを周囲の住民が見守る姿は惜しくも本当に泣ける。物凄く貴重な人材を音楽界は失ったんだなと。最初から順を追って彼女の軌跡を辿り続ければ実感できる作りになってます。という事で,歌詞の内容を直訳すれば大抵が放送禁止なんですが,個性的な容姿とレトロソウルな歌声で世界中の音楽ファンを魅了した伝説の歌姫エイミー自身の世間全般ストレスに苛まれながら紆余曲折ある人生を噛み締め彼女の人生観を租借してみる分では音楽ファンならずともアカデミー賞ドキュメンタリ部門受賞の重厚な作品を劇場で是非お勧めします‼!
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