グラッデン

AMY エイミーのグラッデンのレビュー・感想・評価

AMY エイミー(2015年製作の映画)
4.4
27歳の若さで亡くなった天才シンガー・エイミー・ワインハウスの生涯を描いた音楽ドキュメンタリー。

ドキュメンタリーに時折見られる、製作側の主張や意見を通すのではなく、本作に当たって集められたプライベートビデオ、あるいはインタビューで語られた彼女の生の声から、彼女の生涯と楽曲の深い関係性を紐解くとともに、彼女に関わった人々への思いを伝える素晴らしい内容に仕上げられていたと思います。

私自身、本作の予告編を見るまでエイミーのことは知らなかったのですが、彼女の発言や行動を見ていると、感性の鋭さ、自分自身に対する距離間の極端さを見ると「天才あるある」といった印象を受けました。

何よりも、自身の経験を自分の言葉で伝える表現力と、20歳前半の若さを感じさせない歌唱力に驚かれます。素人の自分でもわかる抜群の説得力、劇中のライブ映像は何曲か鳥肌モノでした。彼女が作ったアルバムを聞いてみようと思わずにいられなくなり、彼女のアルバム『Back to Black』を購入しました。

それだけに、作品後半で伝えられる薬物によるスキャンダル、パパラッチの取材攻勢は、彼女の鋭い感性がもたらすマイナス面や音楽ビジネスの暗部にスポットライトを当てたものであるとともに、彼女を失ったことへの喪失感を強く感じさせられました。

そうした背景を考えると、彼女が歌を歌う姿勢と同様に、自分に対して自由であることを望み、素直てあったことが考えられます。薬物にも手を染めてしまったことで、彼女は精神的に弱い人間だったのか、といえば少し違うと感じていて、感性の鋭さが相まって神経質な部分もあったと思います。そうした意味でも、彼女が有名人になっていく過程で内的に支えてあげる存在がいれば良かったかもしれません。

スキャンダラスな報道にも晒された彼女ですが、本来の魅力である、誇張しなくとも伝わる圧倒的な才能を持つ者=天才の存在を、現在、そして後世に伝える意味でも意味のある作品だと思いました。